【10⽉23⽇ Peopleʼs Daily】回復が続いている中国の観光市場でのキーワードの一つが「没入型体験」だ。従来型観光の「来た、見た、買った」だけでなく、自分自身がその土地の文化の担い手や歴史の登場人物になったような体験を得られる観光だ。

 例えば、山西省(Shanxi)の平遥古城科技芸術館では、映写機16台を使って、地元の「千年の歴史」を巨大な半球形の映写壁に投影している。観客は双林寺の千手観音が生き生きと動く姿を眺め、地元の商人による隊商のラクダの鈴の音を聴き、伝統文化の魅力に没入する。

 河南省(Henan)鄭州市(Zhengzhou)にある河南伝統劇幻城スマート観光没入型体験新空間では、56のチェス盤状の情景空間や21の舞台での6500回余りの公演を行い、夏休み中の入場者が400万人を超えた。市民の李怡(Li Yi)さんは、「ここにはいつも違う風景があり、行くたびに新しい感覚と体験を得られます」と語った。

 北京郵電大学(Beijing University of Posts and Telecommunications)インタラクティブ技術・体験システム文化・観光部重点実験室の陳洪(Chen Hong)副主任によると、消費者が観光や娯楽により高い水準を求めるようになったからこそ、没入型体験は新たな市場を開拓することができるという。

 中国では今年の夏休み、バーチャルリアリティー(VR)技術を利用する没入型体験施設が急増した。生活関連サービスを提供する美団(Meituan)によると、夏休み中のバーチャルリアリティー体験施設の予約件数は前年同期比144%増だった。「没入型」関連の検索件数も前年同期に比べて大幅に増加し、特に30歳以下の若年による検索が5割以上を占めた。

 湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)内の黄鶴楼の下では、漢服を着た外国人観光客が市街地の夜景を楽しみ、月を見上げている。「友情の橋でつながる中国と西洋」をテーマにした夜の没入型体験新空間のイベントで、中国と西洋の楽器、服飾、工芸品、飲食を織り交ぜた、一風変わった文化の盛宴を出現させた。

 北京連合大学(Beijing Union University)中国観光経済・政策研究センターの曽博偉(Zeng Bowei)主任によると、没入型の観光業態には、上海(Shanghai)の「眠れない夜」などの独立型のイベントと、江蘇省(Jiangsu)揚州市(Yangzhou)の痩西湖(Shouxihu)での光と影を使った夜間観光や吉林省(Jilin)長白山のフライトシミュレーター型の映像上映などの新技術と景勝地の伝統芸能や施設などを結合させたものがある。

 中国では、科学技術を投入したスマート観光没入型体験が、特に若い世代の人気を集めている。ただし専門家は、「科学技術はツールにすぎず、観光地資源と文化的魅力こそが観光客を引きつける鍵です」と指摘する。現地の条件に応じて技術との融合を図ってこそ、人気のある没入型空間を形成することができるという。

 陝西省(Shaanxi)西安市(Xi'an)内の「長安十二時辰」をテーマにした地区ではこの夏休み、区画を仕切って現地の文化を取り入れた多くのイベントを企画して、若者を中心に多くの観光客の注目を集めた。各テーマ区画の1日当たりの観光客数はいずれも延べ7000人以上に達した。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News