■「気候変動という宗教」

 ユタ州にあるウェストミンスター大学(Westminster University)のグレートソルト湖研究所(Great Salt Lake Institute)の副所長を務めるデービッド・パロット(David Parrott)氏は、「湖が消失すれば、水が干上がった『マッドマックス(Mad Max)』の世界のように、私たちは地元の町を捨てて出て行かなければならない」として、ディストピアを描いたハリウッド映画シリーズを引き合いに出した。

 湖底に堆積しているヒ素や有毒な重金属が空気にさらされ、砂嵐が起きると、大気が汚染される可能性があるからだ。

 フェリー氏は、こうした危機的状況に対し、地元の共和党員は一丸となって取り組んだと言う。

 水の消費量削減を目指すための農家への奨励金、かんがい技術の向上や人工降雨技術の研究、さらには塩分濃度を抑制するために湖を二つに分割する方策など、過去3年で「10億ドル(約1480億円)以上」が投じられてきたと主張する。

 そして、全国的にも「環境問題は共和党にとっても重要な優先課題であるべきだ」との見方を示した。

 だが、ジョー・バイデン(Joe Biden)政権が目指してきた政策を逆戻りさせることも含むトランプ氏の環境政策は「最優先課題」からは程遠い。

 トランプ氏は、大統領選で勝利した場合、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」から再び離脱する考えを表明。石油資源についても「ドリル、ベイビー、ドリル!(掘って掘って掘りまくれ)」という主張をたびたび繰り返してきた。

 パロット氏は、「トランプが大統領になれば、環境自体にとっても、グレートソルト湖にとっても悲惨な結果になるだろう」と警鐘を鳴らす。

 州都ソルトレークシティーでAFPの取材に応じた保守派の有権者の大半は、湖が干上がっていく危険性について懸念を表明した。

 その一方で、「地元の問題」についてワシントンの議員から「指図される」のは我慢ならないと主張する人も少なくない。ビル・クレメンツさん(75)もその一人だ。

 湖の水位低下については、「こうした問題の多くは自然現象だと思う。(湖の水位は)上がったり下がったりするものだ」と話し、「気候変動という宗教には、私はまだ入信していない」と続けた。(c)AFP/Romain FONSEGRIVES