中国では新型の電力貯蔵施設がクリーンエネルギーの普及を後押し
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【10⽉5⽇ Peopleʼs Daily】中国・広東省(Guangdong)仏山市(Foshan)南海区(Nanhai)獅山鎮(Shishan)ではかつて、電力消費ピーク時の電力不足が地元企業の発展を制約する大きな問題だった。それを解決したのが、300メガワット/600メガワット時の新型の電力貯蔵施設である宝塘エネルギー貯蔵所だ。
同施設は粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)で最大規模の新型エネルギー貯蔵発電所で、風力発電や太陽光発電などによるクリーン電力を蓄え年間4億3000万キロワット時を送電できる。稼働開始以来、蓄電量と送電量はそれぞれ1億キロワット時を超えた。
中国では、風力発電や太陽光発電などの新エネルギー発電の導入が急速に進んでおり、中国電力企業連合会の発表によると、中国の新エネルギー発電設備規模は6月末までに石炭火力発電を上回った。しかし、新エネルギー発電は気候などの影響を受けるので、安定した電力供給は不可能だ。そのため、電力の貯蔵施設が必要になる。
国家エネルギー局によると、中国で稼働中の新型の電力貯蔵施設の設備規模は、今年上半期までに4444万キロワット/9906万キロワット時に達した。この能力はダム式水力発電所2か所に匹敵する。方式別では、リチウム系電池による蓄電が97%だ。宝塘エネルギー貯蔵所では、リン酸鉄リチウム電池が採用された。
電力貯蔵施設でとりわけ重要なのが、電力網に送電する際に電圧を上げる技術だ。宝塘エネルギー貯蔵所の責任者である周躍利(Zhou Yueli)氏によると、電圧を10キロボルトに上昇させて送電する必要がある。宝塘エネルギー貯蔵所では、新方式の高圧直列技術が導入され、従来型の変圧器が不要になった。
また、新たな昇圧技術の導入などで、かつては2メガワット時の施設でも1000平方メートルの敷地が必要だったが、現在では3.5メガワット時の施設もコンテナ1個分の大きさだ。このことは、電力貯蔵施設が移動可能になったことを意味する。周氏によると、緊急時の救援や大規模な屋外イベントなどの際に役立てられるという。
宝塘エネルギー貯蔵所の制御室に入ると、大画面上でデータが点滅し続けていた。同施設の技術者である張敏(Zhang Min)氏は、「私どもは施設全体の210万個以上のセルの電圧、温度、容量などを監視しています。異常が発生すると、システムは直ちに警報を発します」と説明した。
張氏は、「各バッテリーパックに制御装置を設け、運転状況を遠隔で正確に調整することができます。一つのバッテリーセルに問題が発生した場合、以前は関連するバッテリー群全体を交換しましたが、ここでは必要ありません」と述べた。
張氏によると、それぞれのバッテリーパックに、煙、揮発性有機物、可燃性ガスなどに鋭敏に反応する探知機がつけられており、異常を発見すると、自動的に火災警報信号を出し、消火装置を作動させる。消火作業中に他のユニットの稼働には影響が出ず、安定した電力供給を継続できるという。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News