米にも制御不能のイスラエル、今度はレバノン地上作戦
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【10月1日 AFP】イスラエルはレバノンへの地上侵攻を回避するよう米国から求められていたにもかかわらず、「標的を絞った」地上作戦を開始した。中東での紛争拡大が懸念される中、米国が同盟国イスラエルを制御できずにいる現実を改めて示す事例となった。
ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は9月30日、レバノンのイスラム教シーア派(Shiite)組織ヒズボラ(Hezbollah)の最高指導者ハッサン・ナスララ(Hassan Nasrallah)師の暗殺後に緊張が高まったのを受け、イスラエルによる地上侵攻に反対する意向を表明。
レバノンでの限定作戦に関するイスラエル側の計画を把握しているかとの記者団からの質問に対し、「私は皆さん以上に把握している」と答え、「今こそ停戦すべきだ」と語った。
数時間後、国務省のマシュー・ミラー(Matthew Miller)報道官は、「(レバノン)国境付近でヒズボラのインフラを標的とする限定的な作戦」を実行中との連絡をイスラエル側から受けたと明らかにした。
既視感がある。米国がイスラエルに対して交渉による解決や停戦を呼び掛けるたびに、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は軍事攻勢を強化しているように見える。
先週も、米仏両国が中心となり、イスラエル、ヒズボラ双方に3週間の一時停戦を提案する共同声明を発表したところ、インクも乾き切っていない翌日、ネタニヤフ氏はヒズボラを標的とする新たな空爆を実施したと発表した。
ナスララ師を標的にする計画についても、米国は、イスラエルから事前の打診も通知もなかったと、遠回しに苦言を呈している。
米国は依然、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)とレバノンにおいて、外交を優先させることを望んではいる。
一方でアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官の側近は以前から、米政府はイスラエルの主権を尊重するとしており、米国がネタニヤフ氏に及ぼせる影響力には限界があると暗に認めてきた。
軍事・外交面でイスラエルの最大の同盟国である米国が仲裁に入るのは事実上、不可能だ。危機が生じても、及び腰で対応に追われるしかない。
バイデン氏は今年5月、ガザ最南部ラファ(Rafah)への地上侵攻計画への懸念から、イスラエルへの爆弾輸出について、1回分の発送を取りやめた。ネタニヤフ氏に停戦を強いるために軍事支援カードを切ったのは、この1回限りだ。
バイデン氏の後継者となるかもしれない民主党のカマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領と、共和党のドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が次期大統領の座を目指して争う中、バイデン政権としては、選挙前に何としても中東和平合意を成立させたいところだ。しかし、11月5日の投票日が迫る中、バイデン政権に戦略を変更する用意があると見る向きは少ない。(c)AFP/Léon BRUNEAU