【9月30日 CNS】「麻辣湯（マーラータン、Malatang）を注文して、その場で煮ます！年糕（餅）、カニかま、チンゲン菜を鍋に入れて煮ます。どれくらいの辛さがいいですか？」 「少し辛いで。」 「麻辣湯が出来上がりました、424番のお客様、どうぞお召し上がりください！」中国・甘粛省博物館（Gansu Provincial Museum）内にある文化創造商品（文化や芸術をベースにした創造的な商品）の店で、スタッフと観光客が店主と客を演じている。地元の美味しい麻辣湯を模したぬいぐるみの文化創造商品が売れ行き好調だ。

　過去数か月で、中国の文化創造商品市場は「没入型」マーケティング革命を巻き起こしている。文化創造の事業者は地域特有の「美食」をぬいぐるみにして、街頭の食品販売のシーンを模倣している。これにより、消費者が感情的価値を得ながら地元の食文化も理解できるようにしている。文化創造商品市場において「没入型」マーケティングが新たなトレンドとして注目され、多くの事業者や消費者から好評を得ている。

　甘粛省（Gansu）の「麻辣湯」から陝西省（Shaanxi）の「肉夾饃（煮込んだ豚肉の細切りを蒸しパン）」、重慶市（Chongqing）の「火鍋」といった地元の料理を扱う文化創造のスタッフたちは、料理人に扮している。彼らは野菜を切り、料理を作り、調味し、包装することで食品の製造過程を再現している。この演出は、リアルな料理の場面を再現することで、消費者に強い印象と体験を提供し、彼らの関心を引きつけている。

　文化創造業界では、没入型のインタラクティブな購入方法が新しい流行となっている。美食をテーマにした文化創造商品は、消費者がその地域の特色を追求するだけでなく、特有のシーンを体験させることで、ただ食品を消費するのではなく、「文化の祝宴」に参加しているかのような感覚を提供している。実際、博物館の文化創造商品のデザインや機能は他で真似されやすいが、インタラクティブな購入体験やおもちゃとの感情的なつながりはユニークであり、特に若者に大きな「感情的価値」を提供している。

「2024年中国消費トレンド報告」によると、64パーセントの消費者が精神的な充足を求める消費を重視していることが明らかになった。特に若い層の中国人消費者は、精神的満足を重要視している。没入型のインタラクティブな販売手法が市場に急速に広がっているのは、消費者が感情的な体験や個性的な消費に対して強い需要を持っているためだ。甘粛博物館の文化創造商品を購入した樊（Fan）さんは、「名前を聞いて訪れた」と述べ、この商品が美食文化の魅力と没入型販売の創造性、さらには博物館という場の物語性を巧みに組み合わせていると感じている。

　また、美食文化創造商品の売れ行きは「大人向けぬいぐるみ」のマーケティング戦略と一致している。イギリスのぬいぐるみ大手「ジェリーキャット（Jellycat）」はこの機会を先駆けて捉え、ニューヨークで「Jellycat Diner」というファストフード体験店を開設した。ここでは店員がウェイトレスに扮し、料理や包装を行いながら、消費者が実際に「食べ物」を購入する過程をリアルに体験できるようにしている。Jellycatの愛らしいデザインと製品の柔らかさが、特に若者に大きな感情的な価値を提供し、彼らの心を捉えている。中国でも、このような美食をテーマにした体験が流行しており、各地の「レストラン」や「食堂車」で同様の「シーン+おもちゃ+小売体験」モデルが採用されている。これにより、消費者の関心が持続的に引きつけられている。

　ただ、中国で文化創造製品やマーケティング方法が次々と生まれているが、「没入型」インタラクティブマーケティングが長期的に市場の注目を集め続けるかどうかについては議論がある。消費者がインタビューで指摘しているように、「多くの業者が模倣するようになれば、その魅力が薄れ、一過性のブームのように消費者の関心が減少する可能性がある」という心配がある。

　専門家は、文化創造商品が文化を深く掘り下げ、製品の位置づけを正確に管理することが市場での注目を持続させる鍵であると考えている。甘粛博物館は、地方文化とトレンドを融合させながら新商品を次々に市場に投入し、豊かな美食文化を活かした革新的な取り組みで競争に挑んでいる。例えば、甘粛地方特有の食材を使った砂鍋をモチーフにした商品や、操作すると手にまひ感を感じさせる特徴を持つ花椒をテーマにした商品が含まれている。これらの商品は、消費者に新たな体験を提供し、地元の食文化を楽しむ機会を創出している。甘粛博物館はこれらの新しいアイデアを活用して市場の活力を維持し、短期的なヒットから持続可能な発展へと移行するために努力している。(c)CNS/JCM/AFPBB News