【9⽉30⽇ Peopleʼs Daily】インドのニューデリー(New Delhi)で7月下旬に開催された第46回国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)世界遺産(World Heritage)委員会会議では、中国の黄海(Yellow Sea)=渤海湾沿岸の渡り鳥保護区群(以下、黄海渤海保護区)の第2段階分が世界自然遺産に登録された。黄海渤海渡り鳥保護区関連の作業にも力を入れてきた中国の国家林業および草原局世界遺産専門家委員会の聞丞(Wen Cheng)委員はこのほど、人民日報に黄海渤海保護区の意義を説明する文章を寄稿した。以下は、その主要部分だ。

 黄海渤海保護区には世界最大の潮間帯湿地があり、シベリアやアラスカから東アジア、東南アジア、南アジア、オセアニアなどを移動する渡り鳥にとって、移動区域内の欠かせない繁殖地、休憩地、越冬地だ。

 黄海渤海保護区は中国沿海の経済が発達し人口が密集した地域に位置し、周囲には広大な農地と養殖池、新興都市、繁忙な交通路線と規模の大きなグリーンエネルギーのインフラがある。人と野生動物が隣り合い、人と鳥の息吹が通じる世界遺産と言ってよい。

 2022年には国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、黄海渤海保護区の一部である塩城地区(Yancheng)で展開された「鳥類の生息地回復を目指す自然に基づく解決-塩城黄海湿地遺産地生態修復事例」プロジェクトが、「生物多様性100+世界典型事例」の特別推奨事例の一つに選ばれた。同年にはユネスコの持続可能な観光中国試行プロジェクト第2期が塩城地区の条子泥エリアに隣接する巴斗村でスタートした。巴斗村はこれにより「世界自然遺産保護とコミュニティー協同発展実践基地」の称号を獲得した。

 塩城地区は生態の管理や研究、持続可能な農業により社会と生態系の有機的な結合を実現し、さらに社会と経済の持続可能な発展をもたらす人と自然の調和ある共生を実現することを計画している。黄海渤海保護区は人と自然の新たな関係を試行するたたき台になる可能性がある。

 これまでのほとんどの自然遺産は水系の上流に位置していた。しかし、黄海渤海保護区は陸上水系の最下流に位置する。そして厳格に保護されている中心地域でさえ、保護区の外部の水系上流と広範かつ有機的な「生命共同体」が構成されている。したがって黄海渤海保護区の保護は領域内の少数の「守護者」の責任だけでなく、より広い流域空間の民衆の義務だ。そこで、民衆の生活様式が保護と溶け合うようになることが最も望ましい。これは、より多くの人が遺産の保護に参加することが可能であり、かつ必要であることを意味する。塩城地区で始まった試行は、他の地域に価値ある経験を提供するはずだ。

 人々はどのようにして自分の知恵と主体を発揮して、黄海渤海保護区の保護に役立つよう自分の身の回りを管理することができるのだろうか。この問題にしっかりと答えられれば、われわれは世界の多くの生態問題に余裕を持って対処することができる。黄海渤海保護区はそのための唯一無二の実践の場をわれわれに提供している。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News