【9月13日 AFP】政治家や芸能人に正体を偽って電話をするいたずらを繰り返しているロシア人の2人組「ボバンとレクサス(Vovan and Lexus)」が12日、ポーランドのラドスワフ・シコルスキ(Radoslaw Sikorski)外相に電話をかけ、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)元大統領とビデオ通話していると信じ込ませたと明らかにした。

 ロシアのSNSで公開されたいたずら動画には、シコルスキ外相に似た人物の顔のみが映っている。

 電話口では、ポロシェンコ元大統領を装った人物の声が聞こえ、両者は北大西洋条約機構(NATO)、ポーランドによるウクライナ支援、2022年に起きたロシア産天然ガスをドイツに送る海底パイプライン「ノルドストリーム(Nord Stream)」爆破事件などについて英語で議論している。

 ポーランド当局はこの動画の信ぴょう性を確認していない。

 ボバンとレクサスは、AFPに対し声明で「われわれの電話は偽物ではない。すべての会話は本物だ」と述べた。

 さらに2人組は以前、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ(Andrzej Duda)大統領をだました際、大統領府がいたずら電話を事実だと認めたことに言及し、「ドゥダ大統領もそう認めるだろう」と述べた。

 ただし、通話がいつ行われたのかとの質問には答えなかった。

 動画が公開された12日、シコルスキ外相は首都ワルシャワで米国のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官と会談していた。

 ポーランド外務省のパベウ・ブロンスキ(Pawel Wronski)報道官は、動画について知らなかったと述べた。

 同氏は国営ポーランド通信(PAP)に対し、「現在、主にロシア側がディープフェイクを自由に使える状況では、誰もが誰とでも話すことができる」と語った。

 ボバンとレクサスが本物のシコルスキ氏だと主張している人物は、2022年9月に起きたノルドストリーム爆破事件について、「米国が事前に知っていて止めなかったことは今では分かっている」「誰がやったにせよ、ポーランドとしては、よくやったと感じている」と述べている。

 また、ウクライナのNATO加盟をめぐるNATO側の態度は「やや偽善的」だと指摘し、「NATOが言っているのは、(ロシアとの)戦争に勝ったら加盟できるが、その時にはもう(加盟は)必要ないということだ」と発言。ウクライナのNATO加盟は「ロシアとの交渉材料」だと表現した。

 シコルスキ外相とされる人物はさらに「西欧にロシアと戦争をする気はない。これは絶対に越えてはならない一線だ」と述べた。

 そしてウクライナにポーランド兵を派遣することは「実現不可能」だと述べ、ポーランドに米国の核兵器を配備する可能性も「あり得ない」と否定した。

 いたずら電話をかけたロシア人の2人組は、「ボバン」と呼ばれるウラジーミル・クズネツォフ(Vladimir Kuznetsov)さんと、「レクサス」ことアレクセイ・ストリャロフ(Alexei Stolyarov)さん。

 2人はこれまでにトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領や英歌手エルトン・ジョン(Elton John)さん、英国のヘンリー王子(Prince Harry)にもいたずら電話をかけたことがある。(c)AFP