【9月11日 AFP】11月の米大統領選へ向けたテレビ討論会が10日に行われ、民主党のカマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領(59)と共和党のドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領(78)が、人工妊娠中絶から人種問題、米国の民主主義の行方まで激論を交わした。

 2人の直接対決は今回が初めてで、また大統領選までで唯一の機会となるかもしれない。

 つい数週間前まで勝利を確信していたトランプ氏は、ハリス氏の挑発に声を荒げ、選挙集会でよく飛び出す罵詈(ばり)雑言に走った。ハリス氏は笑顔で「トランプ政権による『混乱』後の新スタート」を切ると明言した。

 ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia)にある米国憲法センター(National Constitution Center)で行われた討論会は、ハリス氏がトランプ氏に近づき握手を求めるという意外なジェスチャーで幕を開けた。

 しかし、すぐに火花が散った。トランプ氏は数分もたたないうちに、ハリス氏を「マルクス主義者」と呼び、ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領とハリス氏が「何百万人という犯罪者や精神障害者がわが国に流入するのを許した」と根拠のない主張をした。

 一方のハリス氏は、トランプ氏が有罪評決を下された点を指摘し、トランプ氏が「過激主義者」であり、これまで一貫して「人種を用いて、米国民を分断してきた」と批判した。

 するとトランプ氏は、バイデン氏に敗北した2020年大統領選について、本当に勝ったのは自分だという証拠が「たくさんある」といつもながらの主張を展開。これにハリス氏は「世界の指導者たちはドナルド・トランプを笑っている」と応じた。

 さらにハリス氏はトランプ氏に対し、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領のように「あなたを簡単に飲み込んでしまうような独裁者」にウクライナを譲り渡すのではないかと指摘。「独裁者や専制主義者は、あなたが再び大統領になることを望んでいる」と述べた。

■トランプ氏の動揺

 トランプ氏は通常の議論における攻撃に対しては無敵のように振る舞うことで、長年、政治的な重力に逆らってきた。

 だが、トランプ氏が好んで語る支持者集会について、参加者は「疲労と退屈」で早々に立ち去っているとハリス氏が述べると、トランプ氏は明らかに怒った様子で反論した。

 トランプ氏が冷静さを失って見えたもう一つの場面は、ABCニュースの司会者に発言を訂正されたときだった。トランプ氏は、オハイオ州に流入したハイチ移民が地元住民のペットを食べているとする陰謀論を延々と展開したが、司会者はそうした事実はないとする地元当局の情報を引用した。(c)AFP