猫を殺して食べた女と移民をこじつけ 米共和党、虚偽で反移民感情扇動
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【9月10日 AFP】米共和党の有力者は9日、ハイチ移民がペットの猫などを盗んで食べているという虚偽の主張を拡散した。移民を中傷するこの陰謀論を当局は否定しているが、共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領は11月の大統領選を前に移民に対する不安をあおっている。
共和党の副大統領候補、J・D・バンス(JD Vance)上院議員および同党の議員やインフルエンサーは、オハイオ州スプリングフィールド(Springfield)での根拠のない風説を広め、同市でハイチ移民が増加している状況を大統領選の争点に引き上げた。
オハイオ州出身のバンス氏はX(旧ツイッター)で、「ハイチからの不法移民によって公共の社会サービスが立ち行かなくなり、オハイオ州スプリングフィールド全体で大混乱が起きている」「この国に本来いるべきではない人々によってペットがさらわれ、食べられているという報告もある」と主張。
SNSの一部の右派アカウントは、オハイオ州の女がペットの猫を殺して食べていたとされる報道を盛んに取り上げた。この女と、移民やハイチ人コミュニティーとの関連性を示す証拠は出ていないが、逮捕映像はインフルエンサーによって拡散された。
下院司法委員会の共和党議員らはXの公式アカウントに「オハイオのアヒルと子猫を守れ!」と投稿し、トランプ氏がアヒルと猫を助けている明らかなフェイク画像を添付した。
同じく共和党のテッド・クルーズ(Ted Cruz)上院議員も、「ハイチ移民に私たちが食べられないようにトランプに投票してください」と子猫が訴えている画像をリポストした。
スプリングフィールド市警察は直ちに陰謀論を否定。「移民コミュニティー内の個人にペットが危害を加えられたり、傷つけられたり、虐待されたりしているという信ぴょう性のある通報は受けていない」とし、移民による不法占拠などの違法行為も確認されていないと強調した。
だが、偽情報の投稿は雪だるま式に広まり、数百万回も閲覧されている。Xのオーナーで、1億9700万人のフォロワーを持つイーロン・マスク(Elon Musk)氏もアヒルと子猫の画像などをリポストした。マスク氏はトランプ氏への支持を表明している。
共和党は明らかに人種差別的なこの陰謀論を利用し、民主党の大統領候補カマラ・ハリス(Kamala Harris)氏が副大統領としての3年余りで不法移民対策に失敗したことを示唆し、同氏に対する批判をあおっているようだ。
移民問題は、大統領選の重要な争点とみられている。支持率で拮抗(きっこう)している両候補は10日夜、おそらく最初で最後となるであろうテレビ討論会で対決する。
トランプ氏は9日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「オハイオ州スプリングフィールドという小さな町にハイチ移民2万人が押し付けられている」とし、近年、カリブ海(Caribbean Sea)の貧困国ハイチから移民が大量に流入している状況に言及した。
スプリングフィールドでは何年も前から社会サービスや学校、住宅に関してさまざまな問題が起きており、その要因として移民問題を挙げる声もある。この問題については、8月27日の市委員会の会合などでも取り上げられた。
民主党の有力者は、移民にペットが盗まれているという主張にはほとんど関心を示していない。(c)AFP