【9月6日 AFP】鎮静剤で妻の意識を失わせ、インターネットで募った男数十人にレイプさせたとして起訴されたフランス人ドミニク・ペリコ(Dominique Pelicot)被告の裁判で5日、被害に遭った妻のジゼル・ペリコ(Gisele Pelicot)さん(71)が証言し、警察の捜査で犯罪が明らかになったことで「人生が救われた」と語った。

 本件では、主犯のドミニク被告を含め51人が、ジゼルさんをレイプした罪に問われている。警察は、計92回のレイプが行われ、72人の男が関与したことを確認。うち計51人の身元を特定した。年齢は26~74歳とされる。

 フランス南部アビニョン(Avignon)で2日に公判が始まってから、初めて証言台に立ったジゼルさんはドミニク被告を姓だけで呼び、「警察がペリコ氏のパソコンを調べてくれたおかげで、私の人生が救われた」と述べた。

 ジゼルさんは娘と2人の息子が見守る中、約90分間にわたって証言。5人の判事を前に感情をあらわにし、不可解な体調不良や、運命を決した警察の事情聴取について語った。

 ジゼルさんは長年にわたり奇妙な物忘れなどの健康問題に悩まされ、アルツハイマー病かもしれないと思っていたという。

 2020年11月に捜査官に呼び出され、ドミニク被告が画策し撮影していた約10年にわたる性的虐待の映像を見せられた時には、自らの世界が崩壊したと語った。「私にとってのすべてが崩れ去った。50年間築き上げてきたすべてが」

 ジゼルさんは事情聴取で、50年間連れ添ってきたドミニク被告は「素晴らしい人物」だと話した。だが、「自分が全く動かずベッドに横たわり、レイプされている」という「残酷な」写真を見せられた。

「正直に言って、私にとっては恐ろしい光景だった」「彼らは私をラグドール(ぬいぐるみ人形)のように扱っていた」。ジゼルさんは、今年5月になってようやく映像を見る勇気を振り絞ることができたという。

 ジゼルさんはまた、加害者たちは「匿名の電話をするだけで、私の人生を救うことができたかもしれなかった」にもかかわらず、誰も通報しなかったと述べた。

 ジゼルさんの証言の間、ドミニク被告はうなだれたままだった。

 一部の被告の弁護人は4日、夫婦が放蕩(ほうとう)な関係にあった可能性や、ジゼルさんが10年間に及んだ性的虐待に全く気付かなかったということ自体に疑問を呈した。

 これに対しジゼルさんは「セックスとして扱わないでほしい。これらはレイプだ」と反論。夫婦交換(スワッピング)やフリーセックスは一度もしたことがないと強調した。