【8月30日 AFP】ブラジル最高裁の判事と実業家イーロン・マスク(Elon Musk)氏の対立が激化している。マスク氏が率いる米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)が提供する衛星インターネットサービス「スターリンク(Starlink)」は29日、ブラジル国内の資産が凍結されたと発表した。

 きっかけはマスク氏が2022年に旧ツイッターを買収して改称したSNSの「X」だ。

 ブラジル最高裁のアレシャンドレ・ジモラエス(Alexandre de Moraes)判事は28日、マスク氏が24時間以内にブラジルでの新たな法的代表者を指名しない限り、Xのサービスを停止すると警告した。

 続いて翌29日にはスターリンクが、ジモラエス判事から「スターリンクの資産を凍結し、ブラジル国内での金融取引を禁止する」との命令を受けたと明らかにした。同社はX上で「法的に対処する」意向を示している。

 ブラジル高等選挙裁判所(TSE、選挙管理委員会に相当)長官を兼任するジモラエス判事は、同国における偽情報撲滅の闘いを主導しており、その過程でマスク氏と対立してきた。

 ジモラエス判事が過去に停止を命じたXアカウントの中には、2022年大統領選で選挙制度の信用失墜を狙った極右のジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領の支持者のものが含まれていた。

 同判事は4月、凍結したアカウントの一部をマスク氏が復活させたとして、マスク氏に対する捜査を命じた。一方、マスク氏側は、ジモラエス判事が言論の自由を抑圧していると非難している。

マスク氏はジモラエス判事が「検閲」に従わせるためにXの前法定代理人に逮捕をちらつかせたと主張し、今月、Xのブラジル事業を閉鎖した。ただし、ブラジルのユーザーは引き続き、Xにアクセスできている。

 マスク氏はこのほかにも、公金を使ってボルソナロ前大統領とその側近に有利な偽情報の拡散を計画したとされ、ブラジルの別の司法捜査の対象にもなっている。(c)AFP