イスラエルによるパレスチナ人拷問「エスカレート」 国連特別報告者
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【8月6日 AFP】国連(UN)の特別報告者は5日、イスラエルはパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)での戦闘開始以降、拘束したパレスチナ人への「拷問をエスカレートさせている」とした上で、人道に対する罪の防止に向け、イスラエルに圧力を掛けるよう国際社会に呼び掛けた。
10人で構成する特別報告者は同日付の報道発表文で、国連人権理事会(UN Human Rights Council)が先月公表した報告書に基づいて警告を発した。
報告書は、昨年10月7日のイスラム組織ハマス(Hamas)によるイスラエルへの越境攻撃以降、パレスチナ人の医療従事者、患者、市民、捕らえられた戦闘員ら数千人が「通常、手かせや足かせなどで拘束され、目隠しをされた状態で」ガザからイスラエルに連行されたと指摘。これとは別に数千人が、パレスチナ人がヨルダン川西岸(West Bank)とイスラエルで拘束中としている。
特別報告者は、「拘束されているパレスチナ人への拷問がエスカレートしているのは人道に対する罪だが、回避は可能」だと主張。
しかし、イスラエルは「全く処罰されていない」上、国連加盟国は「虐待や拷問の疑いに関する証言や報告が公表されても沈黙」を貫いていると非難した。
その上で、拘束されているパレスチナ人への面会・監視・保護体制を整えるようイスラエルに圧力をかけるよう呼び掛け、「今必要なのは、独立した国際人権監視団に他ならない」と訴えた。
特別報告者は具体的に、パレスチナ人が「さまざまな虐待や拷問、性的暴行、レイプを受け、劣悪で非人道的な状況に置かれているのを裏付ける報告」を受けているとし、「こうした状況下で、10か月間で少なくとも53人のパレスチナ人が死亡したとみられる」と指摘。
拘束されたパレスチナ人は「おりに閉じ込められてベッドに縛られ、目隠しとおむつを着用させられ、服を脱がされ、適切な医療や飲食料、睡眠を奪われている」上に、「性器などに電気ショックを与えられ、脅され、たばこの火を押し付けられる」などの虐待を受けているとしている。
特別報告者は国連人権理事会によって任命されるが、国連を代表する立場にはない。
一方、ヨルダン川西岸のパレスチナ当局は、パレスチナ人女性が5日、イスラエルに拘束されていた間に負った重傷が原因で西岸地区ジェニン(Jenin)の病院で死亡したと発表した。
パレスチナ人受刑者を支援するNGO「パレスティニアン・プリズナーズ・クラブ(Palestinian Prisoners' Club)」によれば、ハマス幹部を夫に持つこの女性は、5月21日にイスラエルに身柄を拘束された。9日後に釈放された後、病院に搬送され、死亡するまで意識不明の状態が続いていた。
同NGOおよびパレスチナ当局は、イスラエルによる「犯罪」行為により、女性はイスラエルの病院で両脚を太もも部分で切断されていたと説明。NGOは、イスラエル側に女性の脚の返還と診断書の送付を求めているが、回答は得られていないとしている。
NGOの広報はAFPに、女性が亡くなったことで「負傷に至った経緯について、真実は本人と共に葬られた」と話した。
イスラエル軍はAFPの取材に対し、この件については調査中だと回答した。(c)AFP