【8月5日 AFP】英イングランドのダンス教室で子ども3人が刺殺された事件をめぐり、容疑者の出自に関する誤情報に基づいた反移民・反イスラム教的な暴動が各地に広がっている。キア・スターマー(Keir Starmer)首相は4日、極右のデモ参加者に対し、「後悔する」ことになると警告した。

 発端となったのは、イングランド北西部サウスポート(Southport)で7月29日、英国生まれのアクセル・ルダクバナ(Axel Rudakubana)容疑者(17)が子ども向けダンスイベントを襲撃した事件。6、7、9歳の子どもが死亡し、10人が負傷した。

 最初の暴動はサウスポートで30日に発生し、その後イングランド各地に波及。ソーシャルメディアでは容疑者の出自に関する偽情報が拡散し、激化していった。

 スターマー氏はテレビ演説で「直接参加した者であろうと、インターネット上で暴動をあおっておいて姿をくらました者であろうと、この混乱に参加した者は後悔することになるだろう」と述べた。

 同氏は、今回の暴動は「極右の暴力行為」だと指摘。「正当化の余地はない」とし、参加者は「裁きにかける」と約束した。

 イングランド北部のサウスヨークシャー(South Yorkshire)州ロザラム(Rotherham)にある、難民申請者の収容施設として使用されているホテルでは、覆面の反移民デモ参加者によって窓ガラスが数枚割られた。

 BBCが放送した映像には、デモ参加者がホテルに押し入り、燃えているごみ箱を建物内に押し込む様子が映っていた。難民申請者が中にいたかは不明。

 警官10人が負傷したが、地元警察によれば、ホテル従業員や宿泊客にけがはなかった。

 イングランド北東部ミドルズブラ(Middlesbrough)では、数百人のデモ参加者が盾を持った機動隊と対峙(たいじ)。一部はれんがや缶、鍋を警官に投げ付けた。AFP取材スタッフはデモ参加者にカメラを奪われ、破壊された。取材班は無事だった。

 警察によると、3、4両日にリバプール(Liverpool)やマンチェスター(Manchester)、北アイルランド・ベルファスト(Belfast)で行われた極右デモで計150人以上が逮捕された。

 スタッフォードシャー(Staffordshire)警察が4日明らかにしたところによると、難民申請者の収容先として利用されていたバーミンガム(Birmingham)近郊のホテルも襲撃された。「大規模な集団」が「物を投げつけ、窓ガラスを壊し、火を着け、警官を攻撃」した。警官1人が負傷したという。

 極右集団は少なくともモスク2か所への攻撃を扇動しており、内務省は4日、イスラム教関連施設の警護を強化すると発表した。

 極右のソーシャルメディアチャンネルでは、「もうたくさんだ」とのスローガンの下、デモへの参加が呼び掛けられている。

 各地のデモ参加者は、イングランド旗と英国国旗を掲げ、「(不法難民の)ボートを止めろ」などと訴えている。(c)AFP