【7月30日 Xinhua News】中国浙江省自然博物院の古生物学研究チームがこのほど、化石調査を通じてティラノサウルス科恐竜の新属新種を特定した。同恐竜は中国南東部で発見された吻部(ふんぶ)の短いティラノサウルスの一種でもある。関連の学術論文は25日、国際自然科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。

 同研究は、浙江自然博物院の古生物学者である鄭文傑(てい・ぶんけつ)氏、金幸生(きん・こうせい)氏、謝俊芳(しゃ・しゅんほう)氏、杜天明(と・てんめい)氏の4人が共同で完成させた。研究チームは、長年にわたって恐竜研究に尽力し、同博物院の学術および科学の普及活動を支えてきた中国科学院の徐星(じょ・せい)院士(アカデミー会員)に敬意を表し、この新種の恐竜を「Asiatyrannus xui」と名付けた。

 研究チームの1人で同博物院地球科学部の鄭文傑副主任兼研究館員によると、「Asiatyrannus xui」は7200万年から6600万年前の白亜紀末に生息していた。その化石標本に、ほぼ完全な頭蓋骨や尾椎、後肢などの骨格が残されている。ティラノサウルス科のうち最も進化したティラノサウルス亜科に属し、タルボサウルスとティラノサウルス・レックスの近縁種とされる。鄭氏によると、ティラノサウルスは多種類で、ティラノサウルス上科に分類される。ティラノサウルスは約1億6500万年前のジュラ紀中期に出現し、約6600万年前の白亜紀末に絶滅した。一方、ティラノサウルス上科に属するティラノサウルス科の恐竜は、恐竜時代の最後の2千万年の間、アジアと北米で最上位捕食者として君臨した。ティラノサウルス亜科はティラノサウルス科に属する。

 ティラノサウルスといえば、巨大な頭部を持つというイメージがある。鄭氏によると、ティラノサウルスは吻部の特徴から分類するが、頭部も2種類あるという。ティラノサウルス科の恐竜の大半は吻部が短く、頭蓋骨も前後に短く、上顎と下顎の距離があるため、やや「正方形 」に見える。タルボサウルスやティラノサウルス・レックスの頭蓋骨もこの種類に属する。「Asiatyrannus xui」の頭骨の長さは47・5センチで、これも吻部が短い種類に属する。ティラノサウルス科の他の恐竜の中には、細長い吻部を持つものもいて、このような恐竜はアリオラムス類に分類される。

 中央アジアのゴビ(乾燥地帯)地域では、吻部の短いティラノサウルスと吻部の長いアリオラムスが同時に生息していたことが確認されている。前者の方が体格は大きく、両者は異なる生態的地位にいたと考えられる。一方、中国南東部では、この2種類のティラノサウルスは体格が逆になる。吻部の短い「Asiatyrannus xui」と同時代に生息していた恐竜に、吻部の長い「Qianzhousaurus」がある。鄭氏によると、「Qianzhousaurus」の方が体格は大きく、体長は推定で9メートル前後あった。今回発見された「Asiatyrannus xui」は成体ではない恐竜だが、最も急速な成長期を過ぎた亜成体の個体で、体長は「Qianzhousaurus」の約半分しかない。両者は異なる生態的地位におり、直接的な競争を避けるため、異なる捕食戦略を取っていたと考えられる。(c)Xinhua News/AFPBB News