【7⽉15⽇ Peopleʼs Daily】「チベットカモシカだ!」――。列車内では人々が窓に近づいて、遠くに見えるチベットカモシカ(チルー)を撮影し始めた。その時、運転士の李瑜琪(Li Yuqi)さんは助手に両手を広げるポーズを示した。「警笛鳴らすな」の合図だ。今年57歳になる李さんは、青海省(Qinghai)とチベット自治区(Tibet Autonomous Region)を結ぶ青蔵鉄道で最後まで残ったゴルムド(Golmud)・ラサ(Lhasa)間が開通する前から、30年以上も乗務を続けてきた。李さんは警笛でチベットカモシカを驚かせると、正常な移動を妨げる恐れがあることを熟知している。

 青蔵鉄道の沿線にはココシリ(Hoh Xil)、三江源(Sanjiangyuan)、シリン湖の3か所の自然保護区がある。原生の生態環境が残されているが、そのバランスはデリケートだ。

 チベットカモシカは5月になると、それまでいた青海の三江源やチベットのチャンタン高原(Changtang)、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のアルチン山などから青海のココシリの奥地にある卓乃湖、太陽湖、ココシリ湖一帯に移動して繁殖する。

 チベットカモシカの移動ルートは青蔵鉄道と重なっており、ゴルムド・ラサ間の建設時には15億4000万元(約341億円)が沿線の生態保護のために投入された。例えば野生動物の移動のための通路33か所の設置などだ。李さんは「生態環境への影響と野生動物への妨害を最大限に減らすことが、この鉄道路線の鉄則です」と説明した。

 生態環境への配慮は道路でも徹底されている。北京とラサを結ぶ国道109線のココシリ国家級自然保護区内を通過する部分で、チベットカモシカの群れが道路を横断しようとしていた。一帯を管理する保護ステーション職員の指示に従って、往来するすべての車両が遠く離れた場所で停車した。そして、チベットカモシカが長い時間をかけてすべて道路を横切って遠くまで行ってから、通行が再開された。

 ステーションのカルマ・ユンペル(Karma Yungphel)さんは、「最近はチベットカモシカの移動のピーク期です。通常の巡回以外に『エスコート』もしています」と説明した。

 国道109線のココシリ国家級自然保護区内には保護ステーション5か所が設けられている。職員は毎月少なくとも1回、長ければ十数日の保護区巡視を行う。職員の一人は、「職員の大部分は2日前から卓乃湖と太陽湖に行って、出産直後のチベットカモシカの保護作業をしています。残りの者は日常のパトロールとして、チベットカモシカの道路横断を支援しています」と説明した。ステーション5か所の職員は計50人余りで、平均年齢は30歳未満だ。単調な日々を過ごさねばならないが、チベットカモシカ、野生のヤク、チベットスナギツネが走っているのを見ると、「感無量になります」という。

 卓乃湖付近では昨年、5G基地局が開局した。保護ステーションのスタッフはチベットカモシカの遠隔リアルタイム監視も始めた。

 1990年代にはココシリのチベットカモシカの個体数が2万頭未満だった。保護の努力が奏功し、現在では7万頭余りにまで増えた。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News