【6⽉25⽇ Peopleʼs Daily】中国・江西省(Jiangxi)撫州市(Fuzhou)資渓県(Zixi)は面積の8割が山地で常住人口が約10万人だが、30年余りでパン職人4万人以上を輩出した。県内に拠点を置く企業は各地でパン販売店1万6000店舗を展開している。年間売上高は300億元(約6530億円)近くだ。

 きっかけは、軍人だった張協旺(Zhang Xiewang)さんが部隊主催の実技養成班でパン作りを学び、1987年に軍仲間の洪涛(Hong Tao)さんと共に除隊した際に、2人で集めた1万元(約22万円)余りの資金で江西省鷹潭市(Yingtan)でパン店を開いたことだった。2人はひとまずの成果を出すと、故郷の資渓県に戻ってパン店を開業した。

 2人は親族や友人に求められればパン作りについて惜しみなく教え、数年間で100人以上の弟子を育てた。

 資渓県の出身で浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)と河南省(Henan)開封市(Kaifeng)でパン店を展開する徐全竜(Xu Quanlong)さんは資渓県政府の要望に応えて、故郷で全竜芸術ケーキ訓練センターを設立した。すでに累計1万人余りを養成したという。

 県政府はパン業界の規範の制定や包装その他の技術標準を定めるなどした。また、小規模企業向けの「パンローン」などの金融商品などを提供するよう地元の金融機関を指導した。さらに、一連の支援措置を実施するためのパン産業発展弁公室(以下、「パン弁公室」)を政府内に開設した。2018年には地域ブランドの「資渓パン」が認可され、ブランド開発運営企業の資渓パン科技発展が設立された。

 資渓県はパン産業についての評価が高まったことを背景に、業界フォーラムサミットや資渓パングルメ文化祭などのイベントを開催し、新商品の紹介や交流促進を行うようになった。また日産100トンのそぼろ肉加工工場、年産6000トンのプレミックス粉工場、チョコレート、冷凍半製品、クリームなどの工場も誘致して、パン製造を中核とする産業クラスターの形成を進めた。

 パン弁公室の責任者である曽長華(Zeng Zhanghua)さんは、「産業のクラスター型発展はコスト削減と品質向上に有効です」と説明した。

 県内のパン生産工業団地にある麺包科技のオフィスでは、16マスに分かれた大型スクリーンに各店舗の映像がリアルタイムで表示され、原料、生産、物流、販売のデータの取得も行われている。それぞれのパン製品が、どこでどれだけ売れているか一目瞭然だ。

 各地域での販売状況を理解できれば、翌日の生産に正確な参考を与えることができ、製品開発に根拠を提供することもできる。麺包科技の銭海華(Qian Haihua)社長は、「パン業界の製品は更新が速いのです。弊社では毎月、販売量が下位の製品3~5種類を入れ替えています」と説明した。資渓県の製パン企業はスマート化技術によりネットワーク、店舗経営、顧客サービス、現代物流が合体したシステムの構築を模索している。今後はさらに、パン産業を中心に据えた有機農産物の栽培や「パン産業を知る旅行」などの関連産業の構築も模索していくという。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News