【6月19日 CNS】現在、北京市を旅する時には、故宮(紫禁城、Forbidden City)や天安門広場(Tiananmen Square)などの観光名所を訪れるだけでなく、400年以上の歴史を持つ会館でお茶を楽しんだり観劇したり、明代の古刹で無形文化遺産の工芸を体験したりすることもできる。

 北京の中軸線上の歴史的建造物が世界文化遺産に申請されたことで、この古い都の建物は次々と修復・保護され、また再利用され、北京の人びとの生活に溶け込んでいる。

 北京の中心軸は、街のちょうど真ん中を南北に貫いている。南は永定門(Yongdingmen)から始まり、北は鐘鼓楼までの全長7.8キロだ。現存する伝統的な首都の中心軸としては世界で最も完全なものである。700年以上前の元王朝以来、北京市全体がこの軸線上に建設されてきた。

 北京の中軸線は北京で最も特徴的な観光ルートであり、故宮、天安門、前門(Qianmen)などの有名な観光名所は全てこの軸に沿って配置されている。この中軸線は2024年の世界文化遺産として登録申請されており、もし登録が成功すれば、中軸線自体が北京で8番目の世界遺産となる。

 近年北京は、中軸線の文化遺産申請を契機に、多くの重要文化財や歴史的建造物が修復され、文化遺産が歴史的な姿を取り戻し、再び活気と活力を取り戻すことが期待される。この計画には、遺産地区と緩衝地区の両方が含まれ、北京旧市街の65パーセントがカバーされている。これはまた、中軸線の修復とリニューアルが、古都北京に新たな面容を与えることを意味している。

 3000年以上の歴史を持ち、現代中国の政治、文化、国際交流の中心でもある北京の、古都としてのリニューアルは、古代の建造物の修復や住民の生活環境の現代化だけでなく、美しい自然の景観と周辺の生態系の調和を兼ね備えるものだ。近隣地域のリノベーションは、歴史を継承しつつ、新たな活力を生み出している。

 例えば、中心軸の北端の鐘鼓楼では、修復の過程で、「古いものは古いまま」という建築の原則を遵守するだけでなく、周辺の建物の高さを制限したり、古い北京の伝統的な邸宅建築様式「四合院(Siheyuan)」の屋根を修理したり、周辺の環境管理にも配慮し、鐘鼓楼の景観全体が大幅に改善され、鐘鼓楼地区の旧市街の特徴的な景観が再現されている。

 また、前門の近くには、新しく建設された三里河公園(Sanlihe Park)と古い北京の伝統的な住宅街の路地「胡同(Hutong)」と水路が融合し、小さな橋や水辺の独特な景観が造られている。この地区の住民の生活環境を改善するとともに、「水辺と路地とが交じり合う」昔ながらの光景が再現された。

 このほか、中軸の南端にある永定門を再建する際には、他の用途に使われていたオリジナルのレンガをわざわざ探し出し、元の原材料、元建っていた場所、元通りの外観という三拍子そろった修復と再建が実現した。

 歴史的建造物の修復だけでなく、文化遺産が人びとの生活に役立つように、中心軸とその周辺の文化遺産資源の利用を活性化させることも非常に重要な課題である。

 明・清時代に皇帝が天を祭った天壇(Tiantan)の、天を祭る楽曲と舞踊を司る神楽署(Divine Music Administration)の凝禧殿(Ningxidian)は、21年の修復・改修後、再び扉を開いて観光客を迎え、新たに研究され訓練された明代の祭りの儀式や宮廷舞曲の曲目が初めて披露され、観光客は天壇神楽署の歴史と中国数千年の儀礼舞曲の文化に触れることができるようになった。

 天壇の東西を見渡すと、先農壇(Xiannongtan)が見える。ここは古代中国で農耕の神を祭った最高位の祭壇である。現在ここは、北京の第二環状道路内で唯一の農地が設けられ、農耕文化と季節を祝う文化の体験の場となっており、近隣の学校の重要な教育拠点となっている。

 鐘鼓楼、天壇、永定門などの有名な場所に加え、北京の旧市街には、歴史的な趣があるのだが実はあまり知られていない古い建築物が数多くある。例えば、前門の界隈に残る明清時代に商人たちが集まった数多くの会館がそうである。

 その中で、明清時代に顔料を商う外国人商人が逗留した青雲胡同(Qingyun Hutong)の顔料会館(Yanliao Huiguang)は、修復され、100席余りの小劇場となり、京劇、中国伝統の掛け合い漫才「相声(Xiangsheng)」、児童劇など多様な演目が上演されている。

 ちなみに、この劇場では時折、近隣の住民への還元活動として、特別割引価格や無料での公演や映画鑑賞会を開催している。

 景山(Jingshan)に隣接する慶雲寺(QingYun Temple)は、400年以上の歴史を持つ寺院で、修復後は「北京金石博物館(Beijing Jinshi Museum)」となり、民間のコレクターが所蔵する歴史的な印章や篆刻が展示されているほか、篆刻、拓本、無形文化遺産の工芸などを体験することができる。近年、北京の中心軸沿いには、古い建物を利用したカフェや博物館、書店、文化サロンなども多く誕生している。

「北京市文物保護協会」の孔繁峙(Kong Fanzhi)会長は、北京中軸線の世界文化遺産登録申請計画の初期から「北京中軸線の文化遺産登録申請は、古都北京の国際的な知名度を追求するためではない。700年前の元朝の都・大都の時代から、北京はすでに世界的に有名な国際都市だった。世界文化遺産登録は、北京という歴史的文化都市の保護、優れた歴史文化の継承、最終的には一般市民のために美しい都市環境を創造することにある」と強調していた。(c)CNS/JCM/AFPBB News