【6⽉19⽇ Peopleʼs Daily】中国・江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)呉江区(Wujiang)盛沢鎮(Shengze)は世界で最も繊維産業が密集する場所だ。そしてこの地には、盛虹集団が中心となって設立した国家先進機能繊維イノベーションセンター(以下、「センター」)がある。中国全国で7か所ある同様の国家級センターの一つであり、中国初の民間企業が中心となって設立した国家級の製造業イノベーションセンターでもある。

 人工血管を作るには、ポリエステル繊維を編んで造形した上で動物コラーゲンを塗布する。中国では人工血管を輸入に依存していて、高価で入手できる量も少なかった。中国工程院(Chinese Academy of Engineering)の徐衛林(Xu Weilin)院士とそのチームは長年にわたり研究開発を進めて多くの成果を出してきたが、要求を満たす繊維および糸の不足のために困難に直面した。

 徐院士はセンターで開催された学術交流会に招待された折に、状況を説明した。センターの梅鋒(Mei Feng)会長はその場で協力を申し出た。センターは関連分野で一連の画期的な成果を収めており、企業との提携や産業化を目指していたからだ。

 研究者は、1000種類単位の化学物質の中から人体に最もよく適合するものを見出すために実験を繰り返した。研究者はいくつもの難題を解決し、人工血管に適した繊維および糸を開発した。

 センターの画期的成果はほかにも多い。例えば、従来型の方法で作られる糸は布地に織られてから染色されるが、この過程で大量の廃水が発生する。センター高性能繊維プロジェクト責任者の劉慶備(Liu Qingbei)氏は、最初から色のついている化学繊維を作ろうと考えた。

 劉氏はある企業で十数年間にわたってメタ系アラミド繊維を素材にした共重合体着色の技術に取り組んできたが、実質的な進展を得ることができなかった。それほど達成が困難な技術なのだ。しかしセンターでは状況が違った。

 劉氏は、「以前は自分の力に頼るしかありませんでした。センターでは企業などと連携する方式が導入されており、代表的企業十数社や有名大学、科学研究機関による連合が結成されました。人材、資金、設備、業界資源などにより支えられる優れた研究条件が創出されました」と説明した。

 劉氏のチームは各種資源を投入して発色をもたらす化学物質を探した。実験室で結果を得ると、数百万元(500万元は約1億1000万円)を投じてパイロットラインを構築した。劉氏のチームがパイロットラインでの試験生産を開始するまでに要した日数は1年足らずだった。間もなく量産できる見込みという。

 センターは一流の研究者や技術者を集め、さらに高分子合成実験室、紡糸成形実験室、ナノファイバー実験室、パイロット基地、先進機能繊維公共サービスプラットフォーム、工業デザイン研究院などイノベーションのための一連の仕組みを構築し、企業との連携強化にも力を入れている。センターの梅会長は「科学技術の成果は『実験室の外に出て、生産ラインに上がる』ことで初めて、真価を発揮できるのです」と説明した。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News