【6月5日 AFP】米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は4日、合成麻薬MDMAを心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に使用することを勧告しないとの判断を示した。

 PTSDは、生死にかかわることや戦闘、性暴力といった過酷な体験をした後に生じる精神疾患で、毎年米国人の推定5%が発症するとされる。

 しかし、治療薬は2種類の抗うつ薬に限られ、3か月間の投与が必要。しかも奏功率にはばらつきがある。

 そこでカリフォルニア州のライコス・セラピューティクス(Lykos Therapeutics)は2件の臨床試験に基づき、PTSD治療へのMDMAの使用を認可申請。試験はトークセラピー(会話療法)などの心理療法とMDMAの投与を併用する形で、それぞれ約100人を対象に実施された。心理療法とプラセボ(偽薬)を組み合わせる形でも行われた。

 学術誌ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)に掲載された試験についての論文は、MDMAが安全で、PTSDの治療に極めて効果的であることが示されたとしている。

 しかし、FDA諮問委を構成する専門家11人のうち9人が、MDMAの効能を証明するにはデータが不足していると指摘。10人が利益よりもリスクの方が大きいとの判断を示した。

 諮問委メンバーの一人、国立PTSDセンター(National Center for PTSD)のポール・ホルツハイマー(Paul Holtzheimer)氏は、「これまでの試験結果には非常に勇気づけられる」としながら、「有効性、安全性の両面から依然、(認可は)時期尚早だと思う」と語った。

 諮問委の勧告に強制力はないが、FDAが勧告に従わない事例はほとんどない。ライコスは、FDAの最終判断は8月半ばまでに出ると予想している。(c)AFP/Issam Ahmed and Lucie Aubourg