【6月21日 AFP】伝説的なドライバーたちが偉大な足跡を残しているフォーミュラワン(F1、F1世界選手権)のきらびやかな世界。そこから遠く離れたボスニア・ヘルツェゴビナの山道で、ヒムツォ・ベガノビッチさん(36)は速さへの憧れを形にしている。

 ボスニア北西部の町クリュチ(Kljuc)にある自宅の前で、「フェラーリレッド」のレーシングマシンのレプリカを調整しながら、機械工のベガノビッチさんは「昔からF1カーを所有したかった。家の前に置いて、スピンしてみたかった」と語る。

 ベガノビッチさんのマシンは、昨年に首都サラエボで別の熱烈なファンから購入したもの。完成に2年を要したそのマシンは、F1チームが何百万ドルもかけて造る最先端のカーボンファイバー製のマシンとは異なり、金属板を組み合わせて造った単なるレプリカだ。

 それでもベガノビッチさんは、限られた手段を使って少しずつマシンを改良していければと考えている。現在はボディーに丹念に手を加えているところだが、いずれエンジンやタイヤの交換、あるいは自動変速機の搭載もしたいと思っている。

「F1カーを運転するのは、空を飛ぶような感覚で、他の車とは違う」と語るベガノビッチさんは「これはボスニア・ヘルツェゴビナで1台きりのマシンで、他にはない」と誇った。

「危険なターン」が好きなスピード狂だと自ら認めるベガノビッチさんは、ボスニアの山道で車を時速200キロで走らせている。レプリカマシンを見せびらかすかのように、人通りの多い場所に止めることもある。「人が近づいてきて写真を撮ったり、いろいろと尋ねてきたりする。そのときの気持ちは言葉にできない」とベガノビッチさんは語る。

 色は赤以外は考えられない。F1総合優勝7回を誇る伝説的ドライバー、ミハエル・シューマッハ(Michael Schumacher)の長年のファンとして、フェラーリレッドのペイントは、シューマッハが優勝5回を飾ったチームへの敬意の表れだ。

 2013年にシューマッハがスキー事故に遭った後も、同じくらい魅力的なドライバーを見つけられずにいるというベガノビッチさん。近々の目標は、シューマッハを意識して、アウディ(Audi)のV8エンジンを積むことだそうだ。(c)AFP/Rusmir SMAJILHODZIC