【5月30日 AFP】中米パナマで29日、気候変動に伴う海面上昇を受けカリブ海(Caribbean Sea)に浮かぶ小島を立ち退くことになった先住民約1200人に対し、政府が用意した本土の住宅の引き渡しが行われた。パナマで気候変動の影響で住居移転を余儀なくされる住民として、初めての集団となった。

 新居に移るのはカルティスグトゥプ(Carti Sugtupu)島に住む先住民「グナ(Guna)」の人々。同じ海域の他の島と同じく、土地の高さは海抜50センチ~1メートルしかなく、家屋は定期的に浸水。専門家は、海面上昇が進めば住環境は一段と悪化すると警告していた。

 島の住民は漁業やキャッサバ・料理用バナナの栽培、伝統織物の生産、観光業などで生計を立てていたが、飲み水や下水施設、常時使用可能な電気はなかった。

 このため政府は、カリブ海に面するグナヤラ(Guna Yala)先住民保護区に「ヌエボカルティ(Nuevo Carti、新カルティ)」と呼ばれる集落を1220万米ドル(約19億円)かけて造成。

 この日、ヌエボカルティを訪れたラウレンティノ・コルティソ(Laurentino Cortizo)大統領は、最初の入居家族に新居の鍵を手渡した。

 ヌエボカルティは故郷の島からボートで約15分の距離だが、グナの人々にとっては「大移動」となる。実際の入居は来週始まる予定。

 新居の前でビダルマ・ヤネスさん(57)はAFPに対し、「わくわくしている。家は小さいがきれいだし、とても居心地がいい」と話した。

 映像は2023年8月に撮影したカルティスグトゥプ島と、5月29日に撮影したヌエボカルティ。(c)AFP/Juan José Rodríguez