【5月27日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は26日、ドイツへの3日間の国賓訪問を開始し、6月の欧州議会選でナショナリズムから民主主義を守ろうと訴えた。

 ドイツへの仏大統領の国賓訪問は約四半世紀ぶり。欧州連合(EU)の2大国間関係の歴史的重要性を強調し、欧州議会選に向けて結束を示す。

 マクロン氏は最初の訪問地ベルリンで、フランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)大統領と共に民主主義関連の行事に出席。仏独両国における「権威主義への誘惑の高まり」に警告を発し、欧州議会選が民主主義を守るための「闘いであることをわれわれは忘れがちだ」と語った。

 また新型コロナウイルスの世界的流行やロシアによるウクライナ侵攻が起きているここ数年の間に、欧州でナショナリスト政党が政権を握っていたら「歴史は同じではなかっただろう」と指摘した。

 2週間後に控える欧州議会選の「状況は前回選挙の時とは異なっている。この間に多くのことが起きている」と指摘し、「ヨーロッパを守る政党への投票」を呼び掛けた。

 シュタインマイヤー氏は 「欧州には民主主義者の同盟が必要だ」と応じた。

 欧州議会選をめぐる世論調査によると、フランスでマクロン氏が率いる中道派の与党連合と、ドイツで中道左派のオラフ・ショルツ(Olaf Scholz)首相が率いる3党連立政権は共に極右勢力の後塵(こうじん)を拝している。

 またマクロン氏は先月、外交政策に関する基調演説で、ロシアによるウクライナ侵攻以降の世界情勢について「欧州は消滅の危機に直面している。(回避できるかは)われわれの選択に懸かっている」と警告した。

 シュタインマイヤー氏も26日夜の国賓夕食会でロシアの脅威について言及し、「われわれは共に侵略者から身を守り、内外の攻撃に対してより強靱(きょうじん)な社会を築くために学び直さなければならない」と述べた。

 両国間の関係はすべてが順調なわけではない。ドイツ政府関係者からは、マクロン氏の芝居がかった外交スタイルへの不安も聞こえてくる。

 最近ではウクライナへの派兵について、マクロン氏が可能性を否定しなかったことに対し、ショルツ氏はドイツにそのような計画はないと異例の反論を行った。またマクロン氏は安全保障面で、米国に依存しない欧州の戦略的自立を主張しているが、ドイツはその熱意を共有していない。(c)AFP/Valérie LEROUX