【5月17日 AFP】米ハリウッドの巨匠フランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)監督(85)が数十年かけて完成させた待望のSF大作『メガロポリス(Megalopolis、原題)』が、開催中の第77回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)でメディアの評価を二分している。

 AFPが取材したあるプレス向け試写会では、ブーイングと熱狂的な拍手の両方が騒然とわき起こった。

 ニューヨークを思わせる廃退した都市「ニューローマ(New Rome)」を舞台に展開する映画では、俳優アダム・ドライヴァー(Adam Driver)演じる不思議な能力を持つ建築家シーザーが、未来的なユートピアを再建しようと奮闘する。

 この作品には古典から啓蒙時代に至る哲学者から現代の小説家、巨匠といわれる他の映画監督たちの作品まで、引用やオマージュが数多く詰め込まれている。

 せりふは現代英語からシェークスピア(Shakespeare)の詩、ラテン語までが飛び交い、合間に宇宙からナチス・ドイツ(Nazi)の集会までさまざまなアーカイブ映像が挿入される。スクリーン上の出来事と現実の上映会場が相互作用する場面さえあった。

 メディアの反応はまちまちだった。エンターテインメント情報サイトのデッドラインは「真の大胆さに慄然とする、まさに現代の傑作」とたたえ、米芸能誌ハリウッド・リポーターは「驚異的な野心的大作以外の何物でもない」と評した。

 一方、英紙ガーディアンは「詰め込みすぎで退屈、不可解なほど浅薄」と冷ややかで、同タイムズは「強烈に鼻につく演技、言葉を羅列しているだけのせりふ、醜悪な映像」と酷評した。

 いずれにせよ哲学的で型破りなこの映画は、気軽に観賞しようとする多くの観客を深く混乱させるだろう。

 1970年代の全盛期以降、コッポラ監督には不発だった作品もあるが、いまだ多くの人がその才能を信じている。

 映画祭の総代表を務めるティエリー・フレモー(Thierry Fremaux)氏は「彼にとってカンヌは重要であり、カンヌにとって彼は重要である」と語った。(c)AFP