【5月15日 AFP】英資源大手アングロ・アメリカン(Anglo American)は14日、グループ傘下のダイヤモンド産業最大手デビアス(De Beers)の売却計画を発表した。競合する豪BHPの買収提案を退け、より安定した成長が見込める銅や鉄鉱石事業に経営資源を集中するとしている。

 長年、世界のダイヤモンド市場を支配してきたデビアスの売却をめぐっては、より安価な人工のラボグロウンダイヤモンド(ラボダイヤ)との価格競争や、中国をはじめとする需要の低迷をアナリストらは指摘している。

 デビアスは1888年に英植民地政治家セシル・ローズ(Cecil Rhodes)が設立。採掘から宝飾品販売に至るまで、南アフリカ産ダイヤモンドの取引を長年独占してきた。2011年以降はアングロ・アメリカンが株式の大半を保有している。

 米国を拠点とするダイヤモンド業界アナリストのポール・ジムニスキー(Paul Zimnisky)氏は、ダイヤモンド市場の相場は2022年第1四半期の高値から25~30%下落していると指摘。「過去4年間、ダイヤモンドの需要には極めてまれな変動があった」とAFPに語った。

 新型コロナウイルスの流行期には旅行や外食ができなくなった富裕層がダイヤモンドを購入し、他の高級品よりも好調だったが、コロナ収束後の需要は他の商品ほどの回復を見せていない。

 専門家は理由の一つとして、より安価なラボダイヤの台頭が市場の低価格帯を切り崩したことを挙げている。

 10年前には世界のダイヤモンド宝飾品市場で1%にも満たなかったラボダイヤのシェアは、現在20%以上になっているとジムニスキー氏は言う。価格が天然ダイヤの10分の1以下になることもあり、その手ごろさが消費者を引き付けるのだ。

 もう一つの問題は米国に次ぐ世界第2位のダイヤモンド消費国である中国での需要の落ち込みだ。中国ではコロナ危機後の個人消費がいまだ回復していない。

 ただし、同じく業界アナリストのエダン・ゴラン(Edahn Golan)氏は、アングロ・アメリカンの計画は「近視眼的」なのではないかと指摘する。

 同氏は、米国の消費者はより安価なラボダイヤはエントリーレベルの商品と捉えているとし、最終的には天然ダイヤを購入することを望んでいると主張した。(c)AFP