【5月15日 東方新報】神戸市立王子動物園(Kobe Oji Zoo)で5月10日、雌のジャイアントパンダ「旦旦(タンタン、Tan Tan)」の追悼式が行われた。抽選で選ばれたファンや動物園職員、日中関係者ら約160人が参列し、「神戸のお嬢様」と親しまれたタンタンに労いと感謝の言葉を伝えた。

 タンタンは1995年に中国・四川省(Sichuan)で誕生。日中共同での繁殖研究と阪神・淡路大震災で傷ついた市民を元気づけるために2000年7月に来日した。「タンタン」という名前には「新しい世紀の幕開け」の意味が込められている。2021年に心臓疾患が見つかり、両国の専門家が懸命な治療にあたったが、今年3月31日に28歳(人間の約100歳に相当)で天国へ旅立った。

 神戸市立王子動物園の加古裕二郎(Yujiro Kako)園長は、約24年間も神戸で過ごしたタンタンのドラマチックな生涯に触れ、「見る人、会う人すべてを笑顔にする太陽のような存在」「最後まで神戸の復興を見届けてくれたことに最大限の敬意を表したい」と語った。

 メモリアルムービーが上映されると、参列者は愛くるしいタンタンのさまざまな姿を目に焼きつけるように見入っていた。

 飼育員の吉田憲一(Kenichi Yoshida)さんは、タンタンとの楽しかった日々を振り返り、「あなたが治療を頑張ってくれたおかげでパンダの病気についていろいろわかった。今後長生きできるパンダが増える」と感謝し、「たまにはどんな形でもいいから会いに来てくれると嬉しいです」とタンタンに語りかけた。

 16年間タンタンを担当した飼育員の梅元良次(Ryoji Umemoto)さん。「本当に頑張り屋さんの賢い子で、最後まであなたらしかった」と称え、「皆さんを笑顔にしてくれたタンタンとして記憶の中に残してあげてください。輝いていたたくさんの瞬間を時々でも思い出して頂き、皆さんの心の中にあり続けてくれたら」と願った。

 長年タンタンに美味しい竹を届けてきた淡河町自治協議会の3人の「竹取の翁(おきな)」、中国ジャイアントパンダ保護研究センターの楊海迪(Yang Haidi)獣医師も、それぞれの思いをタンタンに伝えた。

 式の中では、青谷愛児園の園児たちが「ありがとうの花」を歌い、「王子動物園に来てくれて、ありがとう」「天国でもたくさん遊んでね。タンタンずっと大好きだよ!」と、タンタンに言葉のプレゼントもした。

 この後、参列者は祭壇に一人ずつ白い花を供え、手を合わせた。

 参列したファン歴20年の神戸市の女性は、「震災の年に生まれた娘とタンタンの成長を同じように見てきました。タンタンもわが子のような存在です。最後まで勇気を与えてくれてありがとう」と涙ながらに語った。

 追悼式の後、薛剣(Xue Jian)中国駐大阪総領事は報道陣に対し、「タンタンは非常に優秀な外交官の一人で、私たち外交官の先輩でもありました。私たちの交流を引き続き見守ってほしい。彼女の遺志を受け継いで、いろいろな分野での交流を盛り上げていきたい」と語り、「パンダ愛から人間愛へ」と強調した。

 追悼式の様子は同園公式ユーチューブ(YouTube)でライブ配信された。後日アーカイブでも視聴可能。園内の特別展「ありがとうタンタン」も9月1日まで開催される。(c)東方新報/AFPBB News