【6月2日 AFP】ロードレース世界選手権の最高峰クラスで7度の総合優勝を飾った後、二輪の世界に別れを告げたバレンティーノ・ロッシ(Valentino Rossi)は、今もサーキットで精力的に過ごしている。現在の戦いの舞台は四輪だ。

 2021年限りでバイクレースを引退した45歳のロッシは、ベルギーのチームWRT(Team WRT)からFIA世界耐久選手権(WEC)のLMGT3クラスに挑戦している。その道の先にあるのはもちろん、6月15〜16日開催の第92回ルマン24時間耐久レース(Le Mans 24 Hour Race 2024)だ。

 5月に行われたWEC第3戦のスパ・フランコルシャン6時間耐久レース(6 Hours of Spa-Francorchamps 2024)の傍らで、AFPの取材に応じたロッシは「自分がモータースポーツを始めた頃の最初の目標がルマンだった。世界で最も権威ある大会だからね」と明かし、「昨年は(ルマンの)サーキットを体験できて本当に楽しめた。ルマンに出られるのは光栄だ」と語った。

 長距離耐久レースは、かつて戦ったバイクレースとは大きく異なる世界だが、ロッシは共通点も見出しており、すでに耐久レースにも慣れてきているように見える。スパでは完走を逃したが、3戦終了時点で今季のLMGT3クラスでは4位につける。

「すでに3戦をこなしたが、耐久レースは本当に面白い」と話すロッシは、「素晴らしい車が多く、非常に優れたドライバーもいて、雰囲気も最高だ。レベルもすごく高いから、懸命に努力して自分を限界まで追い込まないといけない。しかし、今はとても充実している」と明かした。

「大きな違いはフォーマットで、MotoGPは45分でレースが終わるが、ここでは数時間になる。だから戦略性が高いし、同じマシンを複数人で共有する必要もある。そこがとても気に入っている」

「似た部分もある。ブレーキングや正しいコース取り、アクセルを入れるタイミング。まったく別で、同時に似てもいる」

 それでも現時点でロッシがルマンで総合優勝する可能性は低く、LMGT3クラスで戦う今季はまずない。本人も、ルマンで最も注目を集める(最高峰の)ハイパーカークラスは魅力的だが、まだ準備が足りていないことを認めている。

 ロッシは「ハイパーカーを運転したいし、今は(チームWRTの)BMWで頑張っているので、もしかしたら年末には試せるかもしれない」と期待しつつ、「正直に言って、今ハイパーカーにいるのは本当に最高峰のドライバーばかりで、自分がそのレベルに達しているかは分からない」と認め、「もちろん、ハイパーカーという最高峰クラスで選手権を走るのは夢だが、すでにGT3で非常に満足だし、ここで最高の選手の一人になりたい」と語った。

 これまでも常に挑戦をいとわなかったロッシは、四輪車の世界への興味は短期的ではなく、長期的なものだと強調している。

「できる限り長くレースを続けたい。肉体的な感触は非常にいい。自分に速さがあって楽しめている限りは続ける。だからあと10年やれない理由はない」 (c)AFP/Nicolas BLASQUEZ