【4⽉6⽇ Peopleʼs Daily】重慶市(Chongqing)は中国の大都市としては珍しく、起伏が厳しい地勢だ。このことは、89万2400人の障害者住民にとっては移動の不便さを意味する。しかし近年では、障害者や高齢者の生活を便利にするバリアフリー環境の整備が積極的に進められている。

 64歳の彭海廷(Peng Haiting)さんは、幼い頃のポリオのために障害が残った。そのため、つえを使わなければ移動できなかった。2000年には自宅の近くに店を開いた。自宅から店まで1キロ程度だが、彭さんにとっては3キロ近い道のりだった。急な坂を避けるために回り道をせねばならなかったからだ。10年前には障害が悪化したために、車椅子を使わざるを得なくなった。移動はますます困難になった。しかし数年前から再び、移動が楽になった。例えば歩道と車道の段差にスロープが設けられて、通れる場所が増えたからだ。彭さんは「今ではどこに行くのも便利です」と、感慨深げに述べた。

 市内南岸区の南坪正街新街地区で老朽集合住宅の改造が始まったのは2020年だった。住宅が作られたのは1980年代で、バリアフリーは考慮されていなかった。住人には高齢者や障害者も多く、改造に当たってはバリアフリーを考慮してほしいとの声が寄せられた。

 南岸区の関係者は、「区内の新築都市公共建築物や集合住宅のバリアフリー率は100%に達しており、老朽化した集合住宅の改造の際のバリアフリー化も作業の重点です」と説明した。公共の場所だけでなく、障害者の居住場所を調査して可能な限り個別の需要を満たしているという。

 1980年代に建設された北碚区内の集合住宅に住む牟強(Mou Qiang)さんもバリアフリー化の恩恵を強く感じている一人だ。牟さんが住む地区は高低差の大きい丘の上にあり、住民約1300人の半数以上が高齢者だ。牟さんは「昔は街から坂を上って家に帰るのに70段の階段を上っていました。妻は膝の関節が悪くて、支えてもらっても高低差のある階段を上れなくて、家に引きこもっていました」と説明した。

 住宅の改造に伴うバリアフリー化は、地域住民に共通する期待だった。しかし北碚区の担当者によると、当初の提案2種のうち、一つは勾配が急過ぎて、もう一つは狭くて車椅子の通行できない部分があった。

 区側はエレベーターを設置する別の案を採用した。そのため、予算が200万元(約4190万円)以上も膨らんだ。関係者は、「費用はかさみましたが、それだけの価値がありました。バリアフリー化をする以上、皆さんが満足できるようせねばなりませんから」と説明した。

 重慶市はここ数年、老朽化した集合住宅の改造を足がかりにバリアフリー化を進めている。老人養護施設や託児所などの施設370か所余り、その他の施設3000か所余りを改造し、エレベーター4700基余りを追加した。さらに歩道橋や道路の各種段差では、スロープ設置率が著しく向上した。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News