【5月21日 AFP】7月にパリ五輪を控えるフランスでは、首都に数百万人の訪問者が予想されている中で、欧州で脅威を拡大している蚊がアスリートやファンにウイルスを媒介して大会を台無しにすることがないよう対策が急務となっている。

 ヤブカの一種であるヒトスジシマカは、ここ20年間でフランスを含む欧州北部の広範囲に生息地を広げており、デング熱をはじめチクングニア熱やジカ熱などの病気をまん延させている。

 気候変動が寒冷地への適用をたやすくしていると言われる中、仏当局は近年、蚊が存在していない国内最後の地域だった北西部ノルマンディー(Normandy)地方でも、他地域と同様に発生が確認されたと宣言した。

 パリの一部では、熱帯都市で一般的に使用されている薫蒸作業なども行われたものの、根絶は無駄な努力に終わった。

 しかし、パリ五輪の開幕まで時間が迫っている中、ヒトスジシマカに刺されればアスリートは出場の機会が台無しになる可能性があると専門家は警告している。

 昆虫学者でベクター(媒介生物)疾患の専門家でもあるディディエ・フォンテニーユ氏は、「デング熱に罹患(りかん)すれば、どのような障害物も越えられないだろう」と話し、「開催都市、とりわけ五輪の選手村は蚊がいない状態にしておく必要がある」と指摘した。

 保健当局は、根絶が難しい蚊の脅威について「監視を強化していく」と強調した。同国内では昨年、国内でのウイルス感染によるデング熱が45件報告されている。

 ヒトスジシマカが最も好むのは都市部で、水たまりが至る所に存在するなど産卵に理想的な条件がそろっている。

 フォンテニーユ氏によると、「市民を動員」して植木鉢や受け皿に残されたわずかな水分もきれいに掃除するなどして水たまりをなくせば、「80パーセントの問題に対処」できるという。

 他にも防虫剤、蚊帳、蚊の幼虫に利くオーガニックの殺虫剤、さらには人間の体臭に似た成分で蚊を引き寄せて殺す蚊取り器も効果的とされている。

 専門業者のバイオジェンツ(Biogents)は、セーリング会場のマルセイユ・マリーナ(Marseille Marina)を保護する作業の入札に成功し、15台の蚊取り器を設置する計画を立てている。

 同社の責任者によると、場所は1ヘクタール以上におよぶ「緑が多い日陰の湿地帯」だといい、大会期間中には、スタッフが定期的に高さ80センチの金属製の箱をチェックすることになっているという。

 一方、研究者は蚊の生息数を減らすため、DNAの組み替えや不妊化を行っている。(c)AFP/Anne Padieu