【4⽉2⽇ Peopleʼs Daily】中国・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のアルタイ地区(Altay Prefecture)ブルルトカイ県(Burultokay)では、牧畜民が広大な牧草地に散開して移動しながら生活している。県人民法院(裁判所)は牧畜民のために、「宅配法廷」を提供している。

 アレイ・バヘトビエク判事とドスジャン・ダウキエン書記官は、金銭絡みの紛糾が発生しているとの連絡を受けた。2人は原告と被告のいる放牧地に向かった。

 問題の発端は、原告から羊200頭余りの放牧を請け負った被告が、130頭ほどを勝手に売ったことだった。アレイ判事は、時間が経過しても原告が裁判を起こさなかったのは、双方が親族だからと知った。さらに被告は子が重病になり治療のために羊を売ったが、家計が苦しくて返済が滞っていたことも知った。

 アレイ判事は原告と被告の双方に「金額についての争いはありません。争点は返済期限だけです」と言い、法律をそのまま適用するならば「被告は遅くとも2、3か月以内に返済せねばなりません。支払わなければ強制執行です。被告は所有する羊や牛を売り払わねばなりません」と説明し、被告に「あなたは信用を失い、代理放牧を依頼する人もいなくなります。生活はどうするのですか」と問い、分割しての支払いを勧めた。被告は「5年に分けて返済します」と言った。

 アレイ判事は次に原告を説得した。「親族なのだから彼を助けるつもりで、5年間の分割返済を認めたらどうでしょう」と言った。原告は「困っているのを知っていたから、今まで我慢しました。分割して返済すると言って、期限通りに返済しなかったら、どうなるのですか」と質問した。

 アレイ判事は「あなたが同意するならば、私がここで調停合意書を作成します。約束通りに返済しなければ、あなたは裁判所に調停合意書を示して強制執行を申請することができます」と説明した。2人は合意した。

 張培玉(Zhang Peiyu)判事は屋外での「法治授業」の最中だった。集まった牧畜民十数人から質問が相次ぐ。「牛3頭が熊に食われた。誰が弁償してくれるんだ」「ネットでニセモノを手に入れたらどうする」などだ。

 張判事は一つ一つの質問に懇切丁寧に対応し、牧畜民に法律知識の小冊子を配った。張判事は「車に資料を積んで移動し、人が多い場所があればそこで質問を受けて、法律意識を高めています」と説明した。

 最初の事例のような「宅配法廷」では、争いの5割程度をその場で解決している。複雑な案件は改めて裁判所で審理する。また、インターネット法廷という方法もあり、当事者の負担を軽減できる。

 裁判官の仕事は楽でない。移動に時間がかかり、タイヤがぬかるみにはまって車が動けなくなったり、草原で野宿したりすることもよくある。アレイ判事は「車で行けなければバイクや馬で、馬も駄目なら歩いて行きます。でも私たちが努力して紛争当事者に、法律は冷たい条文だけではなく、法治とは温かいものと感じてもらえれば、苦労の甲斐があります」と述べた。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News