【3月15日 東方新報】北京市の稲研究者グループが、米粒の平均的な大きさと稲穂の最大粒数との間の厄介なトレードオフ(一得一失の関係)の背後にある遺伝子の謎を解読し、次世代の超高収量品種への道を切り拓いたことを、8日米国の科学誌「サイエンス(Science)」に発表した。

 専門家はこの発見を「半世紀前にハイブリッド米が開発され、世界的な飢餓の抑制に役立って以来、米の品種改良に大きな革命をもたらすものだ」と高く評価している。

 米粒の大きさと粒の総数との間には負の相関関係があり、粒を大きくすると粒数が減ってしまうため、高収量品種への進歩を長い間妨げてきた。

 童紅寧(Tong Hongning)研究員が率いる中国農業科学院作物科学研究所の研究者たちは、1本の茎に複数の粒が集まって成長する野生品種であるクラスター・スパイクレット・ライス(穂が密集している稲)に注目した。

 長年の研究の末、彼らは稲の主要遺伝子のクローニングに成功し、植物ホルモンの一つであるブラシノステロイドを遺伝子工学で操作し、粒の大きさを損なうことなく粒の数を増やす方法を解き明かした。

 クラスター・スパイクレット・ライスは、ほぼ1世紀にわたり世界の植物研究者の興味を集めてきたが、その形成の原因となる遺伝子は特定されていなかった。

 試験栽培のデータから、童氏の方法によって開発された品種は、植える場所によって収量が11.2パーセントから20.9パーセント増加することが判明した。

 また、童氏の話によると、このホルモンはトウガラシでも同じような役割を果たしており、自然界におけるマルチスパイクレット(集穂性)表現型を制御するホルモンの、より広範な役割を示唆しているという。

 中国農業科学院の曹永生(Cao Yongsheng)副院長は「稲の研究には矮性稲の育種とハイブリッド稲の育種という二つの大きなマイルストーンがある。今後、クラスター・スパイクレット・ライスのような重要な遺伝子の研究が進み、生産高がさらに飛躍的に伸びることを期待している」と、大きな期待を寄せている。

 曹氏は「米は世界人口の半分以上が主食としている。世界人口の増加と耕地面積の減少に伴い、米の収穫量の向上は、世界の食料安全保障を確保するために非常に重要なことだ」と強調する。また彼は「基礎的な農業科学研究の進歩は農業革新の原動力であり、中国が農業分野で高度な自立を達成するための基盤だ。遺伝子編集、合成生物学、デジタル・インテリジェンスなどの技術は、農業に変革をもたらし、技術競争を激化させている」と付け加えた。

「サイエンス」誌の共同執筆者の一人で、中国水稲研究所の錢前(Qian Qian)副所長は「科学の進歩が中国の農業生産価値の63%に寄与し、国の食料回復力を強化している。中国の農業はすでに多くの面で世界の最先端を走っている」と自信を示している。

 彼は「ハイブリッド・ライスの父と称されるレジェンド研究者・袁隆平(Yuan Longping)氏に代表される科学者たちは、ハイブリッド・ライスという世界的な難題を克服し、中国の食糧問題を解決するための強固な基盤を提供した。ハイブリッド米のおかげで、私たちは世界と対等な立場に立つことができた」と、稲の研究に尽力した過去歴代の科学者たちの功績を称えた。(c)東方新報/AFPBB News