多くの人に力を与え続ける視覚障害者の弁護士 中国
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【3⽉11⽇ Peopleʼs Daily】中国・天津市(Tianjin)出身の王慧(Wang Hui)さんは、高校時代に視神経萎縮と診断された。盲学校への転校を勧められたが従わなかった。結局、人の数倍の努力をすることで蘭州大学(Lanzhou University)に入学した。
大学入学後に病気が再び悪化し、1年間休学せざるを得なかった。しかし、復学すると同級生と同じように卒業することを决めた。講義は録音して何度も聞いた。2008年には同校初の盲目の卒業生になった。
王さんは、遭遇した問題を一つ一つメモしてから解決方法を探る。口ぐせは「方法は必ずある。少しゆっくり進むだけ」だ。
視覚障害者が陥りがちな状況に、「読書は点字だけ、娯楽はラジオだけ」がある。王さんは友人と共に画面を読むソフトを開発し、視覚障害者に携帯電話やパソコンの使い方を教えてきた。病気のために60代で失明したある女性は、王さんを訪ねて午前9時から午後5時までかけて携帯電話の使い方を教わった。女性は「未来の生活に自信を持つことができました」と喜んだ。別の高齢の男性は、その場で詩をつくって習いたての携帯電話の操作により友人に送信した。返信を受け取った男性は王さんの手を握り、「王先生、ありがとう。あなたは盲人の目です」と叫んだ。
王さんは当初、技術関連の仕事に専念しようと考えていた。しかし、個人の力は小さいと考えるようになった。社会全体に視覚障害者のことを考えてもらい、バリアフリー環境を整えていくためには法律が重要と気付いた。
王さんは大学を卒業して10年後に、司法試験を受験することに決めた。1500時間以上の音声授業を受けることになった。毎朝4時に起きて聴講して電子メモを取り、仕事を済ませてから深夜まで再び聴講した。睡眠時間は4~5時間しか取れなかった。
受験が迫ると目が見えないために会場に入れてもらえないことを心配して、天津市司法局にメールで状況を説明した。思いもよらない通知が来たのは3、4日後だった。天津市司法局は王さん一人のための試験場を設けた。王さんは画面を読むソフトを使って受験することができた。
合格したのは2019年だった。法律事務所に入って、天津初の盲人弁護士として活躍することになった。
王さんは、ネット授業は地域の隔たりに関係ないので、視覚障害者のための公益サービスをより充実させられると考えた。そこで、「心の光スマート教室」を立ち上げた。まだネットを使えない視覚障害者のためにはオフラインの活動も行い、法律やIT製品の利用法などの実用知識の普及を図っている。
王さんは2023年、天津市人民検察院の公益訴訟のオブザーバーに招き入れられた。王さんが手がけた視覚障害者のバス利用のためのバリアフリーを督促し、保障する行政公益訴訟は、最高人民検察院により同年のバリアフリー環境建設検察公益訴訟の典型事例に選ばれた。
王さんは歩みを止めない。これからも実際の行動で、視覚障害者の心の灯をともし続けていく。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News