【2月13日 AFP】ロシア大統領府は12日、実業家イーロン・マスク(Elon Musk)氏率いる米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)が提供する衛星インターネットサービス「スターリンク(Starlink)」を、ロシア軍が前線で使用しているとするウクライナの主張を否定した。

 ウクライナ国防省情報総局(GUR)は、ロシア軍がスターリンクのシステムを「組織的」に使用している証拠があると述べ、「密輸」していると非難した。

 スターリンクは地球低軌道の衛星ネットワークを使った衛星通信サービスで、辺地や通常の通信インフラが使えなくなった地域にインターネット接続を提供できる。ロシア軍との戦闘を続けるウクライナの通信網にとって不可欠となっている。

 ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は12日の会見で、自国内でスターリンクは「正式に供給され得ないし、実際に供給されていない」と述べた。同国内からは、機材があったとしてもアクセス不可能だとしている。

 だがウクライナ側は、ロシア軍による使用を主張。GURのアンドリー・ユソフ(Andriy Yusov)報道官は同日、国営テレビで「スターリンクはロシアで自由に利用できる。昨年と比べて、ロシア軍による前線でのスターリンク使用はさらに組織的になっている」と述べた。

 一方、マスク氏はX(旧ツイッター)への投稿で、スペースXがロシアにスターリンク端末を販売したという報道を「断じてうそだ」と否定。「われわれの知る限り、直接的にも間接的にもロシアに販売されたことはない」と明言した。

 だがGURのユソフ氏は「公式にはロシアに販売されていない」点は認めるものの、ロシアが「並行輸入、つまり実質的には密輸入」によってスターリンクを購入していると指摘した。

 ウクライナ侵攻に対する西側の制裁発動以降、ロシアは国内に入らなくなった製品を入手するため、第三国の貿易業者や仲介業者のネットワークを構築してきている。

 スターリンクをめぐっては、過去にウクライナ政府とマスク氏が衝突したことがある。同政府は昨年、ロシア海軍艦隊を攻撃するため、黒海(Black Sea)でのスターリンクの通信接続を要請したが、マスク氏はこれを断っている。(c)AFP