【2月13日 AFP】ケニア西部で発生した交通事故により、24歳の若さで死亡した陸上マラソン男子の世界記録保持者ケルビン・キプタム(Kelvin Kiptum、ケニア)選手に対して12日、マラソン界の伝説的ランナーの一人である同胞のエリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge)らが哀悼の意を示した。

 パリ五輪までわずか数か月という中でのキプタム選手の死は、ケニアと陸上界に衝撃をもたらした。マラソンの前世界記録保持者で、同選手とは五輪で初のライバル対決が期待されていたキプチョゲ(39)は、X(旧ツイッター)に「深く悲しんでいる」と投稿。続けて、キプタム選手を「新星」と呼び、「これからの全人生で、偉大な記録を達成するはずのアスリート」だったとつづった。

 ケニアのウィリアム・ルト(William Ruto)大統領もXで、キプタム選手を「壁を打ち破ってマラソンの記録を樹立した世界屈指のスポーツ選手の一人」だとし、「一人の並外れたスポーツマンが、この地球上に並外れた記録を刻んだ」と追悼した。

 2児の父親でもあるキプタム選手は11日、母国カプタガト(Kaptagat)から大地溝帯(Great Rift Valley)に近いエルドレット(Eldoret)に車で向かっていたところ、同日午後11時ごろに道路を外れて立ち木に衝突した。

 警察は、キプタム選手とルワンダ人コーチがその場で死亡し、同乗者の女性が負傷したと公表。事故現場となったエルギョマラクウェット(Elgeyo Marakwet)郡警察の公式報告書によると、キプタム選手の車がコントロールを失い道を外れると、そのまま60メートルほど進んだ後、大きな木に衝突したという。

 ケニアのメディアで報じられた画像では、車のフロントガラスが粉々になり、ルーフやドアが折れ曲がり取れかかっている様子が確認された。

 キプタム選手は昨年10月に行われたシカゴ・マラソン(Bank of America Chicago Marathon 2023)で、キプチョゲがマークした当時の世界最速記録を34秒更新する2時間0分35秒の世界新記録を樹立。当時まだ23歳で、マラソン挑戦わずか3度目での快挙達成となった。

 各方面から追悼の意があふれる中、大地溝帯のチェプサモ(Chepsamo)村にあるキプタム選手の実家には弔問客が集まり、父親や妻を慰めていた。キプタム選手の父親は、地元テレビ局のシチズンTVに対し、一人息子と話したのは10日が最後だったと明かした。(c)AFP/Nick Perry