元ソウル高等裁判所部長判事のカン・ミング氏(c)KOREA WAVE
元ソウル高等裁判所部長判事のカン・ミング氏(c)KOREA WAVE

【02月03日 KOREA WAVE】ソウル高裁の部長判事を務めたカン・ミング氏(1月30日退官)は、現役時代に裁判所で「デジタル伝道師」「ITベテラン」として知られていた。裁判官人生36年で、判決文の作成をはじめとする法律業務に多様なデジタル技術を活用した。

カン氏は1988年に裁判官としての第一歩を踏み出した。そのころはまだ、コンピューターや情報化に対する概念さえなかった。
 
しかし、新人のころからコンピューターで業務を進めた。当時、国はコンピューターを支給していなかった。カン氏は「PCを直接組み立てて判決作成業務に活用した」と話した。その後、ワープロソフトやエクセルの関数機能も活用した。

初期の法律情報データベースがない時も、専門プログラムに判例を整理し、裁判業務で参照した。スマートフォンの出現後、音声認識タイプで判決文を作成し、業務速度を高めた。

「デジタル技術を活用した業務で、36年間に1万200件を超える判決文を作成した。これは平均の1.5倍を上回る」

カン氏はこう振り返る。

「チャットGPT」「クローバーX」など、スマホの「生成型AIアプリ4銃士」を常に活用している。こうした理由から、カン氏は裁判所で指折りの「デジタル伝道師」となった。

年齢、学歴によりデジタル格差が発生している状況であり、「パワーユーザーまたはエンドユーザーの立場で、AI技術をはじめとするデジタル活用法を教える講演をしていく。スマホに搭載されたアプリ活用法まで研究し、一般の人に知らせたい」と話した。

オフライン講演だけでなく、ユーチューブ動画、寄稿などで活動する計画もある。5月ごろにはそのような活動を進めるための研究所を設立する。「法律分野だけでなく多様な産業にAIをはじめとするデジタル技術が積極的に活用されるべきだ。国、企業ではない一般市民がデジタル技術を積極的に使用してこそ社会が肯定的な方向に変わるだろう」

一日も早く裁判所にAI技術が浸透することを望み、退任直前まで法律業務にAIが導入されるように努めた。その結果、来年下半期には裁判所に判決文の作成を支援するAIが導入される。今年は生成型AIの導入妥当性の検討を進める。「生成型AI技術が裁判所に導入されれば、裁判官の業務効率が2~3倍上がり、裁判研究員の需要も減る。悩みの種である裁判遅延問題も解決されるだろう」

政府が今年10月から法律分野にAIを適用するという発表をした経緯がある。特定事案に対して最も類似した下級審の判例を推薦する技術だ。だが、カン氏は「今年政府が適用するのはAI技術とは言えない。最も類似した文書を探す、これまでのデジタル技術に過ぎない」と話した。

政府の技術ではなく、民間企業のAIが裁判所に導入されるべきだ――これがカン氏の立場だ。政府の技術より、民間企業間の競争を通じて、最も優れたAIを裁判所に適用するのが効果的だとしている。

「現在、米司法省は最も性能の良いAIを活用し始めた。韓国でもこのような体制を構築することが急務だ。米国に比べて韓国は(法律にかかわる業務にIT技術を活用する)リーガルテックの資本や人材が絶対的に劣悪な状況だ。国内企業は汎用AIより医療事件、交通事故事件、離婚事件など分野別に特化した専門法曹AIを深く研究すれば勝算があるだろう」

「生成型AIが法律業務に効果的に浸透するためには、克服しなければならない課題がある。裁判所はすべての判決文をはじめとする実務資料、実務便覧、裁判所内部の電算網であるコートネット上に登載されたすべての実務論文、資料集などすべての非公開資料をAIのデータ入力資料として活用されなければならない」

中でも、判決文の公開が必須だという立場だ。もちろん、性的暴行や離婚事件など、個人情報の侵害が憂慮される事件は除外するという条件であることは言うまでもない――こう強調した。

(c)KOREA WAVE/AFPBB News