【1月21日 AFP】スウェーデン・ストックホルムで1月のある寒い朝、数十本のクリスマスツリーが氷の浮いた海に投げ入れられた。シーズンが終わると廃棄されるツリーを再利用して、海の生態系を再生するための取り組みだ。

 この取り組みは2016年にスポーツフィッシング協会が始めたもので、環境保護活動家から称賛されている。

 使われるツリーはすべて殺虫剤が散布されていない針葉樹のみを販売する小売店のものだ。数日前まではこうしたツリーはストックホルムの家々に飾られていた。

 だが今は、モールなどの飾りの代わりに石が重しとして付けられ、船で工業地帯沖に運ばれ、海に投げ込まれるのを待っている。

 プロジェクトを率いるマリン・シェリン氏はAFPに、「この辺りには海草がほとんどない。魚が卵を産む、重要なすみかが失われた」と話した。

「(生息地を)自然に回復させるのはとても難しい。(ツリーの投入は)失われたものの代わりだ」

 2016年以降、1000本以上のクリスマスツリーが回収され、さまざまな場所に沈められてきた。

 ツリーの枝や葉は魚が卵を産むのに適しており、稚魚には絶好の隠れ家を提供する。

 過去に撮影された動画には、沈められたツリーの枝にゼリー状の膜に覆われた魚の卵が産み付けられている様子が映っている。
 世界自然保護基金(WWF)の担当者は「実際に効果が出ている」と話した。

 この担当者によると、バルト海(Baltic Sea)では農業などの人間の活動が原因で海の富栄養化が進み、藻類の増え過ぎが問題になっている。

 魚は藻類を食べ、増殖を抑制するため、食物連鎖内で重要な位置を占めている。だがスウェーデンでは19世紀以降、魚の重要なすみかである沿岸湿地の多くが農地に開発されてしまった。

 スカンジナビアでは1月13日にクリスマスが正式に終わるため、多くの人はこの日にツリーを処分する。

 回収所に小ぶりのツリーを持ってきた地元に住む女性(63)は「環境に優しい再利用方が見つかって本当に良かった」と話した。

 この取り組みは現在、他の地域にも広がっている。

 映像は1月11~12日撮影。(c)AFP/Viken KANTARCI