マンドゥロのイ・サンホ代表(左)から説明を聞くマイクロソフト(MS)のサティア・ナデラ最高経営者(CEO)(右)=マンドゥロ(c)KOREA WAVE
マンドゥロのイ・サンホ代表(左)から説明を聞くマイクロソフト(MS)のサティア・ナデラ最高経営者(CEO)(右)=マンドゥロ(c)KOREA WAVE

【01月16日 KOREA WAVE】手や腕の一部を失った障害者にとって義手は大きな力になる装置だ。しかし、韓国の義手市場の大部分は美観用製品が占めている。電子義手は指一本で1000万ウォン(1ウォン=約0.1円)以上と高いうえ、良い製品を見つけるのは容易ではない。

韓国のスタートアップ「マンドゥロ」は、低コストの電子義手を開発している。9~12日に米ラスベガスで開かれた世界最大のテクノロジー見本市「CES2024」で高齢者やアクセシビリティ部門で最高革新賞を受賞した。

マイクロソフト(MS)のサティア・ナデラ最高経営者(CEO)は9日にマンドゥロのブースを訪ね「非常に良い」とコメントした。

マンドゥロのイ・サンホ代表は2015年、彼と同い年の両手を切断した友人から3Dプリンティングによる義手製作の問い合わせを受け、プロジェクトを開始した。1カ月ほど試作品を作ってみて、本格的に事業に参入した。

CES2024に電子義手製品を展示したマンドゥロ(c)KOREA WAVE
CES2024に電子義手製品を展示したマンドゥロ(c)KOREA WAVE

◇「安価な製品はなかった」

イ・サンホ氏は「既存の製品群にはタイプ別の製品があったが、価格が高すぎた。一方、新規スタートアップの製品は相対的に安いが、一部のタイプだけを対象にするため多様な障害に対応しにくい問題があった」と話した。

イ・サンホ氏は、10年あまり大規模な投資を受けずに研究・開発を進め、ようやく上肢切断障害者の大部分に適合する製品群を備えたという。これまで開発した「Mark5」と「Mark7」シリーズは、両腕と上腕切断障害者用の5本指の義手だ。最近開発された「Mark7D」は部分切断障害者のための指単位の義手だ。

マンドゥロの義手の最大の長所であり特徴は価格だ。イ・サンホ氏は「以前は指一本に1000万ウォン程度し、オーダーメードで製作をすれば費用が追加で必要となり、高すぎた。Mark7Dは指一本約50万ウォンまで価格を下げた」と説明した。

マンドゥロが安価な義手を作ることができた背景には、技術の内在化がある。超小型モーターと減速機などの駆動系を直接、設計・製作した。

CES2024のブースで製品を紹介するマンドゥロのイ・サンホ代表=マンドゥロ(c)KOREA WAVE
CES2024のブースで製品を紹介するマンドゥロのイ・サンホ代表=マンドゥロ(c)KOREA WAVE

◇「自社モーター開発・2段減速機構造設計」

Mark7はブラシレス直流モーターとマイクロ制御ボード、2段減速機を搭載している。指の中に入る10mmサイズの小さなモーターにより、指一本当たり約2kg程度の握力、1~2秒程度の握力動作が必要だった。「このために指内蔵型の超小型モーターを開発した。自動化設計が可能なソフトウェアも一緒に開発した」そうだ。

マンドゥロのイ・サンホ代表(左)から説明を聞くマイクロソフト(MS)のサティア・ナデラ最高経営者(CEO)(右)=マンドゥロ(c)KOREA WAVE
マンドゥロのイ・サンホ代表(左)から説明を聞くマイクロソフト(MS)のサティア・ナデラ最高経営者(CEO)(右)=マンドゥロ(c)KOREA WAVE

次の問題は減速機だった。1分に約3万回回転する速いモーターに比べ、実際の指の速度は遅いため、減速システムが必要だった。このため、適合した減速機を設計し、3Dプリンティングをしながら耐久性を確保するための複合構造を導入した。

最初の減速機はモーターと一緒に組み立てられ、指先と体の指の骨の間の関節(PIP)の間に置いた。速く低く力を縮小して2番目の減速機に伝達する。

Mark7は13関節を備えており、2.5kgから最大8kgに達する握力を支援する。重さは成人向けで380gに過ぎない。1本の指モジュールであるMark7D製品は55g水準まで軽量化した。

耐久性について、イ・サンホ氏は「指の曲げ、開きの繰り返し試験を実施した結果、約25万回まで十分な耐久性を示した」と説明した。この他にも指の直径は10~12mmで、長さは12~25mmまで多様化し、オーダーメード型生産が可能な点も特徴だ。

ロボット指の義手「Mark7D」=マンドゥロ(c)KOREA WAVE
ロボット指の義手「Mark7D」=マンドゥロ(c)KOREA WAVE

◇「筋電図信号適用可能…」世界市場を攻略

切断部位の筋肉から発生する「筋電図」信号を利用できる点も特徴だ。マンドゥロは2020年から約4年間、ある医療機器研究開発事業に参加し、「筋電電動義手のための指・手のひら内蔵型統合駆動システム開発」研究を実施したことがある。

イ・サンホ氏は電子義手技術をヒューマノイドロボットに活用できるという可能性も提示したうえ「このような5本指型のロボットの手が数千万ウォンに達するなら、私たちは300万ウォン水準で供給できるようになるだろう。ヒューマノイドや上半身ロボットマネキンなどに適用できるとみている」と語った。

マンドロは今回の展示を基点に、臨床段階にある電子義手製品を本格的に市場に投入する方針だ。韓国国内のみならず世界中の切断障害者に安価で良い製品を提供するという夢の実現に向け、一歩前進する契機となった。

イ・サンホ氏は「会社を初めて設立した時から『お金がなくて電子義手を使えない人がいてはならない』というモットーを強調してきた。今年も突っ走りたい」と抱負を述べた。

(c)KOREA WAVE/AFPBB News