【1月11日 AFP】英国で、郵便局で利用されていた会計システムの欠陥により、郵便局長らが横領などの罪で不当に訴追された事件に再び注目が集まっている。欠陥があったのは、富士通(Fujitsu)が納入した会計ソフトだった。政府は10日、冤罪(えんざい)被害者が受けた有罪判決を取り消し、直ちに補償を行う方針を表明した。

 リシ・スナク(Rishi Sunak)首相は同日、元局長らの無実の罪を晴らし、補償を行うための新法を導入するという極めて異例の決定を発表し、「英国史上最大級の冤罪」を正すことに協力したいとの考えを示した。

 この事件では、郵便局長ら700人以上が不当に訴追された。民事訴追を受け、罰金や多額の訴訟費用の支払いを強いられた人もいた。発端は20年以上前にさかのぼるが、事件を扱ったテレビドラマが最近放送されたことで、再び関心が集まっている。
 
 新法により、イングランドとウェールズの当事者の有罪判決が取り消されるほか、1人当たり60万ポンド(約1億1000万円)の賠償金を受け取るか、個別に補償協議に臨む機会が与えられる。

 一方、集団民事訴訟の原告に対しては、新たに7万5000ポンド(約1400万円)が支払われる。政府は近年、事件の冤罪被害者2500人以上に対し、総額1億5000万ポンド(約280億円)近くをすでに支払ってきたとしている。

 高等法院は2019年、金額に食い違いが生じていたのは犯罪行為が原因ではなく、システムの欠陥だったとの判断を下した。

 しかし事件により、大勢が人生を狂わせられた。中には、収監され、破産し、自宅を失い、健康を損ねた被害者もいた。4人が自殺し、無罪が証明される前に数十人が亡くなっている。(c)AFP/Joe JACKSON