【1月12日 東方新報】かつて「海のシルクロード」の出発点として繁栄を誇った中国福建省(Fujian)の港町・泉州市(Quanzhou)。この地を訪れたマルコ・ポーロは「東方見聞録」(1299年)の中で、「ザイトン(泉州)は周辺全域の商人たちがやって来る港だ。この港には驚くべき量の商品や宝石が往来している」と活写している。「ザイトン」とは、当時の泉州市の別名だ。

 明代には、港に土砂が堆積して、大型船が入港できなくなったことなどから、国際貿易港としての地位を他都市に奪われてしまう。旧市街をめぐる細い路地や赤レンガ造りの建造物は往事の繁栄を現在に伝えている。

 泉州が再び注目されたのは、中国政府が2013年から陸と海のシルクロードに重ねて「一帯一路(Belt and Road)」経済圏構想を打ち出したからである。「一帯」とは陸路を指し、中国から中央アジアさらには西アジア、欧州につながる広い地域で「シルクロード経済ベルト」と呼ばれる。一方、「一路」は中国から南シナ海、インド洋、アラビア海を経て地中海に到達する海上ルートで「海のシルクロード」と呼ばれる。

 泉州の人口は887万9000人(2022年末)。北に福建省の中心都市である福州市(Fuzhou)、南は経済都市のアモイ市、東は海峡を挟んで台湾と向き合う。「一帯一路」建設によって海上、陸上交通の要所として発展する潜在力があることは間違いない。

 復興の期待を追い風にして、2023年12月19日には、国内外の専門家を集めた学術会議「海洋文明と21世紀海上シルクロード建設フォーラム」が開催された。

 フォーラムでは、政府のシンクタンクである国家発展改革委員会社会発展研究所や中国社会科学院、福建社会科学院、厦門大学(Xiamen University)などから専門家数百人が参加し、70本近くの論文が寄せられた。

 開幕式であいさつ立った泉州市共産党委員会宣伝部長兼統一戦線工作部長の劉林霜(Liu Linshuang)氏は、「21世紀における海のシルクロードの建設の中心地域、先駆地域である泉州市で、海洋文明に関する学術研究を行うことは大変有意義だ。この学術の饗宴は、泉州市、さらには福建省の海洋文化を深く掘り下げ、海洋経済を発展させていくことになるだろう」と述べた。

 基調報告をした福建省社会科学院の廖萌(Liao Meng)副研究員は「福建省は世界に散らばる華僑の故郷であり、香港、マカオ、台湾の華僑と協力して、その役割を最大限に発揮すべきである」と指摘している。

 すでに、海のシルクロード復興の兆しは現れている。2021年には、泉州の遺跡群が国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界文化遺産に登録された。遺跡群には、宋代、元代にペルシャやアラブからはるばる海を越えて泉州にやって来たイスラム教徒の商人たちが建てたモスクなども含まれている。

 2023年上半期には、国内外から泉州市を訪れた観光客は前年同期比49パーセント増の3816万人に上り、観光収入は同60パーセント増の431億8000万元(約8640億円)に達した。

 泉州の別名である「ザイトン」とは、泉州に多い植物「刺桐(デイゴ)」の中国語の発音「ツゥトン」が、アラビア語でオリーブの木を意味する「ザイトゥーン」とよく似ていたため、アラビア人たちがそう呼ぶようになったといわれる。

 ちなみにオリーブの木は平和の象徴とされている。泉州が繁栄を取り戻し、オリーブの木が茂るのを見てみたいものである。(c)東方新報/AFPBB News