【12⽉30⽇ Peopleʼs Daily】中国南東部に位置する江西省(Jiangxi)・崇義県(Chongyi)にある上堡棚田には、紀元前からの2200年以上の歴史がある。

 上堡棚田の周囲の山に繁茂する森林は水源をかん養している。渓流が山を下る。用水路から動力を使って水をくみ上げる必要はない。棚田は山肌に沿って配置され、土の流出を防ぐ。山が林を養い、林が水を蓄え、水が田を潤し、田が土を守る好循環が形成された。上堡棚田は2022年に世界灌漑(かんがい)施設遺産リストに登録された。上堡棚田はそれ以前に、世界農業遺産にも指定されている。

 地元の上堡郷の朱遠金(Zhu Yuanjin)副郷長は、「上堡棚田の山肌は花崗岩質で吸水性と貯水力があるので、山の上の部分で浸透した雨水が山の中腹以下の傾斜地から染み出して、棚田にとっての尽きることのない水源になっているとの見方があります」と説明した。

 崇義県水利局の盧鑫平(Lu Xinping)局長は、「先人は自然の法則を尊び、傾斜地の配水システムを築きました。長期の干ばつに見舞われても、上堡の棚田が干上がったことはありません」と説明した。棚田づくりには主に土、竹、木、石など素朴な材料が使われており、拡張と修繕が繰り返されたことが分かったという。現在の上堡棚田は5万ムー(約33平方キロ)以上の規模だ。

 生物工学の専門家で農業企業の経営者でもある陳兪亦(Chen Yuyi)氏は「ここでは、先祖代々の伝統的な農耕方式が用いられています。土壌は肥沃さを残し、水田は日当たりが良好です」と述べた。陳氏によると、上堡棚田は海抜500-1000メートルで、収穫した米は食感が良い。また、棚田の周辺にはマンゴスチンが植えられており、病虫害を抑制している。

 陳氏が請け負った棚田では有機肥料を使い、生物を利用した虫よけを導入するなど古人の伝統農法を受け継ぎ、さらに陳氏の現代農業科学技術の知識も導入されている。例えば雑草の駆除で、生命力が旺盛なヒエは人手で抜いているが、一部のその他の雑草はあえて放置している。イネとの生存競争を発生させて、イネの生命力を高めるためだ。陳氏は「生態環境を通じてイネ自身の病害抵抗力を高めることは、古人の耕作の知恵と同じ発想です」と説明した。

 陳氏は、国家遺伝資源バンクから導入したイネを上堡棚田に植えた。特殊な品種だが、栽培は成功した。1本の稲穂から米180粒を産出でき、将来は陳氏の会社にとって最高の商品になる見込みという。陳氏は、上堡棚田にこれまで以上に高い価値を持たせることができると考えている。

 上堡棚田の高所に設けられた展望台に上ると、眼下には無数の棚田が広がる。そして、あちこちで観光客が撮影している。主な目的はSNSに投稿するなどだ。上堡棚田はエコツーリズムの人気の目的地になりつつある。古い農法を伝えてきたことで出現した新たな光景だ。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News