【12月27日 東方新報】中国で若者が高齢者向けサービスを利用する「蹭老式消費」が話題となっている。

「蹭(Ceng)」は「あやかる」という意味があり、訳すと「高齢者あやかり消費」「シルバー便乗消費」といったところだ。「若者が利用することで高齢者がサービスを受ける機会が減ることはないのか」という疑問の声もある。

 中国都市部の団地街では、割安で食事ができる「社区食堂」がある。団地に住む高齢者の生活や健康を支援するため地元行政が設置しているものだが、最近は各地で若者の利用が増えている。

「肉や魚を使った料理は1品6元(約119円)、野菜料理は1品4元(約79円)。ご飯は1元(約19円)、スープは無料。20元(約398円)も払えばお腹いっぱいですよ」

 そう話すのは、北京市内で近所の社区食堂を使う20代の会社員、張(Zhang)さん。食堂では毎日、肉・魚類のおかずが2~3種類、野菜類のおかずが2~3種類あり、店員に「これと、これ」と指さし、プレートにおかずを盛ってもらう。

「社区食堂は安い上に、お年寄り向けに塩分などを抑えてヘルシーなのがいいですよ」と張さん。社区食堂で支払いに使う専用カードも作っているという。

 社区食堂と言えば以前は「安かろう、まずかろう」のイメージがあったが、最近はメニューや味付けが工夫されている。利用客の3人に1人が若者という社区食堂もあるという。

 食事だけでなく、旅行でも「あやかり」が見られる。シニア向けツアーに若者が参加することも珍しくなくなった。今年の労働節連休(4月29日~5月3日)では、「搶占老年旅遊団(シニアツアーに潜り込む)」という言葉がSNSの検索ワード上位に入った。

 杭州市(Hangzhou)の20代女性、朱(Zhu)さんもシニア向けツアーに参加した一人。「一般のツアーは次々と観光スポットを周り、豪華な食事、買い物コースなどで客に『金を落とさせる』狙いの内容が少なくない。シニア向けツアーはゆったりした行程で、ぼったくりのようなコースもなく、価格も安い。気楽に旅行を満喫できます」とその魅力を解説する。

 最近は、高齢者向けの教養講座「老年大学」に通う若者も増えた。 広州市(Guangzhou)に住む23歳の女性、劉(Liu)さんは老年大学でヨガと油絵を学んでいる。老年大学は1コース週1回で15コマ、料金は300~600元(約5972~1万1945円)と非常にお手頃な値段だ。劉さんは「親と同じ年代の人と一緒に学ぶのは新鮮です。次の学期ではピアノを習ってみるつもりです」と充実した表情を浮かべる。

 中国では最近、日本のカルチャースクールのような「夜間学校」が若者の間で爆発的に人気となっている。音楽、美術、料理、ネット講座、ダンスなど多種多様で講座の申込率は数十倍となっている。そこで、多くのコースがある老年大学に、若者が注目するようになった。

「高齢者便乗消費」が広がるにつれて、「高齢者サービスが低下しないか」という議論も起きている。

 重慶市(Chongqing)の老年大学関係者は「老年大学は高齢者向けの福祉予算から助成金が出ている。以前は若者も受け入れていたが、現在は45歳以上のみ入学可能と明確にしました」と説明する。一方、北京市東城区の老年公開大学の担当者は「募集の枠が残っている場合、教育資源の有効活用の観点から若者を受け入れており、その数は年々増えている。一般的に若者向けの教養講座が少ない事情もある」とし、学びたい若者の受け皿にしているという。

 サービスを受ける当事者からは、今のところ「歓迎」の声が多い。社区食堂、シニアツアー、老年大学を利用する高齢者は「若者と接する機会ができて楽しい」「子どもや孫と話しているよう」という感想が多く、若者は「お年寄りからお菓子をもらい、昔話を聞くのが面白い」「自分は職場ではコミュ障タイプだけど、お年寄りとは打ち解けて会話ができる」とインターネットに投稿している人が少なくない。「高齢者あやかり消費」が、世代間交流の役割を果たしているようだ。(c)東方新報/AFPBB News