【1月1日 AFP】ブラジルサッカー界の新たなホープと称賛されるエンドリッキ(Endrick)は、17歳にしてネイマール(Neymar da Silva Santos Junior)やペレ(Pele)と比較される立場にある。しかし本人は、そうした期待にはあまり関心がないと話している。

 パルメイラス(Palmeiras)のカンピオナート・ブラジレイロ(ブラジル全国選手権)1部連覇に貢献し、18歳となる今年はスペイン1部リーグのレアル・マドリード(Real Madrid)に加入するエンドリッキは、「どんな選手でもペレの足元にも及ばない。彼はサッカー界の王様だ」と話し、「僕はただエンドリッキになりたいし、エンドリッキが何者かを示したい」と語った。

 小柄でスピードがあり、ボールを持った際の独創性に優れるエンドリッキは、16歳でプロデビューを飾り、すでに素晴らしい実績を残している。1部優勝2回に加え、スーペルコパ・ド・ブラジル(Supercopa do Brasil)とサンパウロ(Sao Paulo)州選手権のタイトルを獲得。一昨年結んだレアルとの契約は、移籍金6500万ドル(約92億5000万円)にボーナスを加えた額と伝えられている。

 昨年11月には1994年のロナウド(Ronaldo)以降では最年少での代表招集を受け、フェルナンド・ジニス(Fernando Diniz)暫定監督に対しても、エンドリッキを先発で使い、ロナウドやトスタン(Tostao)ら大選手がまとった背番号9を与えるべきだという声が高まっている。それでも本人は、「代表の9番はたくさんの選手が欲している。僕は背番号にはこだわらない。ただピッチに立ってプレーしたいだけなんだ」と話している。

 レアル移籍後のエンドリッキが評判に見合うプレーをできるかはまだ分からないが、プレッシャーの中で実力を発揮する方法はすでにいくつか心得ている。

 デビューシーズンとなった2022年に注目を集めたエンドリッキは、昨年はスポットライトの下でフルシーズンを戦う経験をし、シーズン前半は19試合でわずか4ゴールと苦しんだ。得点が取れない自分にいら立ちを募らせ、ピッチで涙を見せることもあった。

 昨季について、エンドリッキは「スタートが不安定だった」と振り返りつつ、「そこで頭の中を少し切り替えたら、自分が幸せ者だと気づけた。何とかチームのタイトル獲得に貢献できたし、来季はもっとやれると思っている」と話している。

 ちょっとした切り替えとは、SNSでの自分に関するコメントを読むのをやめ、家族や友人に囲まれることだった。後半戦ではそれが奏功し、チームはボタフォゴFR(Botafogo FR)を抜いて首位に浮上すると、激しい優勝争いを制した。エンドリッキ自身もボタフォゴ戦では貴重な2得点、最終節でも優勝を決定づける1点を決めるなど、終盤10試合で6ゴールを挙げた。

 それでもエンドリッキは「みんなは僕がヒーローだと言うが、自分ではそうは思わない。チーム全体がヒーローだ」と話すと、「愛するチームを助けられたことがとにかくうれしい」と語った。

 マドリードへは両親や兄弟と移る予定だが、今は「不安になる」のを避けるため、そのことは考えないようにしている。

 チームメートになるビニシウス・ジュニオール(Vinicius Junior)が、スペインで人種差別被害に遭っていることもよく把握しているが、ブラジルで自身も人種差別を受けたというエンドリッキは、「気にせずに自分のプレーを磨き続けた」と話している。

「自分が一番幸せになれることをしたい。それはサッカーをプレーすることだ」 (c)AFP/Rodrigo ALMONACID