【12⽉23⽇ Peopleʼs Daily】中国・安徽省(Anhui)出身の鄧鮮花(Deng Xianhua)さんは浙江省(Zhejiang)・徳清県(Deqing)で暮らしている。家族の事情により戸籍を安徽省から浙江省に移す必要があったが、仕事が忙しくて帰省できずに困っていた。しかし現居住地の警察官に手伝ってもらい遠隔手続きを利用したところ、数分で完了できた。鄧さんは「この効率とサービスはすごい!」と言い、思わず親指を立てた。

 このような驚きは長江デルタで常態化しつつある。長江デルタでは上海市と江蘇省(Jiangsu)、浙江省、安徽省が参加するネット利用の行政サービスである「一網通弁」が2019年5月に始まった。すでに148項目のサービスを提供しており、今年6月までに利用回数は642万8400件を超えた。

 長江デルタの一体化発展の最終目的は、庶民が質の高い発展の成果をよりよく共有できるようにすることだ。長江デルタ地域の行政部門は「長江デルタの2億3700万人」のために交通、教育、医療、養老などの公共サービスの建設と共有を通して、例えば農村部の生活の都市と同水準への引き上げなど暮らしの「高品質化」を推進している。

 浙江省嘉興市(Jiaxing)嘉善県(Jiashan)第一人民病院では、市民の董丹麗(Dong Danli)さんが家族の医療保険の電子証明書を提示するだけで、医師が決済をしてくれた。董さんの義父は上海出身で保険に加入しているが、以前は嘉善で高血圧薬を調剤するには、まずその場で料金を支払ってから上海に戻って精算手続きをせねばならなかった。入金まで20営業日以上もかかったという。董さんによると、今は省を越えた現場決済ができる。長江デルタ地域は全国に先駆けて、他地域での医療費直接決済の試行を開始した。41都市の1万5000余りの医療機関で省を越えての直接決済が可能になり、延べ1300万人に恩恵がもたらされた。

 上海市、江蘇省、浙江省、安徽省は2018年以降、養老協力覚書を締結してきた。これを受け、江蘇省宜興市(Yixing)、浙江省・長興県(Changxing)、安徽省広徳市(Guangde)は中国で初めて省や県域を越えての高齢者用施設の利用を可能にした。

 長江デルタモデル区執行委員会は2022年、2区1県と共同で「長江デルタ生態・グリーン一体化発展モデル区共同富裕実施方案」を発表した。中国初の省や地域をまたぐ共同富裕実施方案だ。目標には、2025年までに1人当たり総生産を15万元(約299万円)にし、都市部と農村部の住民の所得格差を1.8倍以下にし、住民の1人当たり可処分所得を8万元(約160万円)に引き上げるなどがある。

 上海社会科学院都市と人口発展研究所の周海旺(Zhou Haiwang)副所長は同「方案」を、長江デルタで共同富裕を実現する青写真にとって重要な一里塚と表現して「共同富裕の実現の障害になる行政区域による縦割りを打破し、より高い立ち位置からより大きな空間を活用する、長江デルタが共に発展するための新たな道筋の模索だ」と評した。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News