■「士気を少しでも上げたい」

 一方、この番組はイスラエルの政治家に対しても容赦ない。約15年にわたって権力の座にあり、ハマスへの対応で大いに批判されているベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相には特に手厳しい。

 ネタニヤフ首相とハマス幹部シンワル氏との対話を模したコントもある。

 このコントでは、ネタニヤフ氏役の俳優が「これまでいろんなことをしてあげた。監獄からも出してあげた。なのに(こんなことをして)恥と思わないのか?」とシンワル氏役の俳優に語り掛ける場面があるが、これは2011年の交渉で、拘束されたイスラエル兵の解放と引き換えに、シンワル氏ら数百人のパレスチナ人受刑者を釈放したことを皮肉ったものだ。

 こうしたユーモアはセンシティブだが、視聴者からはおおむね好評だ。番組再開後の視聴率も記録的な数字となっている。

「エレツ・ネヘデレトは、過去20年でいくつもの衝撃的な出来事に遭遇してきた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)もその一つ。それでも、番組を休んだことはなかった。恐怖と不安に対する最も有効的な治療薬は、コメディーだと信じているからだ」とプロデューサーのセゲブ氏は語る。

 そうした強い決意の下で番組制作は続いているが、撮影現場での厳しさに俳優たちが追い詰められることもある。

 ハマスのシンワル氏を演じたエリ・フィニッシュさんは撮影中、スタジオに効果音として流れた赤ん坊の泣き声に耐え切れず、その場で泣き崩れてしまった。

 その他の演者たちも、それぞれのやり方で仕事と向き合いながら、この困難な時期を乗り越えようとしている。

 広く人気のあるスタンダップコメディアンで冠番組も持つアディール・ミラー(Adir Miller)さんもその一人。これまでにイスラエル軍の部隊や、ハマスの奇襲の生存者が収容されたホテルを慰問している。

 ミラーさんはこうしたステージに上がることを「とても躊躇(ちゅうちょ)した」と言う。それでも「兵士たちの士気を少しでも上げたいとの思いがあった」と胸の内を明かした。(c)AFP/Michael Blum