【12⽉13⽇ Peopleʼs Daily】中国・江蘇省(Jiangsu)塩城市(Yancheng)は582キロの海岸線を有する。干潟の総面積は4553平方キロで、一帯は東アジアと豪州や太平洋諸島を行き来する渡り鳥の重要な休息地だ。塩城自然保護区は国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界自然遺産、塩城市はラムサール条約で認定された国際湿地都市だ。

 中国では2023年、同年から2035年にかけて取り組む自然教育の充実の重要な一環として、海岸の湿地を利用した自然教育の強化が発表された。塩城市は地元の湿地資源を利用して、社会が力を合わせて自然教育に取り組むことになった。

 市内にある黄海湿地博物館にはマッコウクジラの骨格、タンチョウ、シフゾウ、ヘラシギなどの貴重な標本から成る1000点以上の展示品や大型デジタル立体表示、ホログラフィック展示システム、黄海湿地動態モニタリングプラットフォームなどの没入型体験施設がある。

 ホログラフィックの展示窓には4D動画で渡り鳥の飛来の様子が映し出され、436種の鳥を集めた「塩城鳥類」インタラクティブウォールは子どもらを夢中にさせる。同館の展示部門責任者である塩城市湿地・世界自然遺産保護管理センター長の呉其江(Wu Qijiang)氏によると、同館の常設展示室は100回以上の企画調整を経て、2022年の試験開館からこれまでに延べ8万3000人を集めた。

 塩城市では塩城湿地珍鳥国家級自然保護区、江蘇省大豊シフゾウ国家級自然保護区なども特別展示館を設置している。塩城市塩瀆実験学校や東台法院(裁判所)などは建物内に「ミニ博物館」を開設して、教師と生徒あるいは社会の一般大衆に「湿地の変遷」や「鳥類の神秘」を紹介している。

 市が力を入れているのは「はこもの」の建設だけではない。例えばオンラインとオフラインによる科学普及教室を展開している。珍鳥保護区と塩城市教育局は2019年に塩城市湿地をテーマとする自然教育書を制作し、市内の全小中学校に配布した。シフゾウ保護区の職員は周辺の市民の居住区域などにも足を運び、法知識や科学知識を広めつつ、共に保護をする構図を打ち立てた。塩城市湿地・世界自然遺産保護管理センターは専用ウェブサイトなどで科学の普及活動を展開しており、すでに記事約500本が一般公開された。

 塩城市ではまた、塩城師範学院(Yancheng Teachers University)湿地学院やその他の教育研究機関も内容が豊富で形式も多彩な探求型の学習活動を積極的に行い、小中学生を湿地に連れて行き自然を体感させるなどしている。

 政・産・学・研の一体型企業の江蘇黄海湿地文化発展は、黄海湿地に飛来する絶滅危惧種の渡り鳥のヘラシギのキャラクターの「塩スプーン」を創作した。黄海湿地博物館の売店では、かわいらしい「塩スプーン」をあしらったTシャツやコップその他の商品が販売されている。同社の徐紅欣(Xu Hongxin)社長は、「塩スプーン」が人々に愛されるようになる過程は、自然教育の理念がより多くの人の心に根付く過程でもあると説明した。(c) Peopleʼs Daily /AFPBB News