【12⽉9⽇ Peopleʼs Daily】中国ではこのところ、SF作品の創作が極めて盛んで、中国国内だけでなく日本など海外でも熱心なファンが増えている。四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)で開催された2023年世界SF大会でヒューゴー賞最優秀短中編小説賞の受賞作品になった「時空の絵師」の作者は、中国人作家の海漄(Hai ya)さんだ。海さんはこのほど人民日報の取材に応じて、自らのSFに対する考えや、中国のSF界の状況を説明した。以下は、海さんの言葉を整理して再構成した文章だ。

 SF創作の難題の一つは、難しい用語を使って背景などを長々と説明せねばならない場合があることだ。それでは物語の質を損ねてしまう。私は劉慈欣(Liu Cixin)先生などの手法に触発されて、作品中のSFの世界作りは徐々に展開するようにしている。「時空の絵師」も冒頭はSFの要素を少なくした。最初はサスペンスのような雰囲気で、話が進むにつれてSF的な設定が浮かび上がる構成だ。

「時空の絵師」については、SFと伝統文化を組み合わせる手法が斬新として、どこから着想を得たのかと聞かれることが多い。直接の着想を得たのは、北宋の画家の王希孟(Wang Ximeng)による傑作の「千里江山図」だ。王希孟の事績については記録が極めて少ない。そのおかげで作家が想像力を発揮できる余地は極めて大きい。

 どの作家の創作にも歴史や文化の背景がある。SFもそうだ。中華文明は長く継続した歴史を持つ。中華の優れた伝統文化は創作のための膨大な「データバンク」だ。中国では、ますます多くの創作者が中華の優れた伝統文化の恩恵を得ている。

 科学技術の春こそがSFの春を作る。科学技術が絶えず発展することで、人びとは科学への憧れや好奇心を強める。人々はそのことでSF作品を求めるようになり、SF業界には活力がもたらされる。現在の中国の科学技術の繁栄は、SF創作の最大の原動力だ。私は作家であると同時に金融業界に身を置く者だ(海漄さんは銀行員でもある)。そのことで、私は常に産業の視点から中国のSFの未来を考える。中国のSFが本当に強くなるためには、映画やテレビなどと結合する産業チェーンの確立が必要だ。映像などの優れた二次作品の創造はSF作品へのニーズをけん引する。SF産業の発展には文学創作、著作権取引、映画・テレビ改編などの各段階が共に努力し、力を合わせる必要がある。

 成都での世界SF大会に参加して感じたことは、海外のSFファンやSF作者の多くはすでに高齢だが、中国のSFファンやSF作者はとても若いということだ。中国では若いSFファンがますます増えている。中国のSF界は作り手側も受け取り手側も、これから層がどんどん厚くなる。誠実に努力さえすれば、われわれは世界を感動させ中国のSFを、長いスパンを通じて作ることができる。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News