【12月6日 Xinhua News】国際医学誌ネイチャー・メディシンはこのほど、中国の研究チームが執筆した医療人工知能(AI)を用いた膵臓(すいぞう)がんの早期発見に関する論文を掲載した。電子商取引(EC)大手アリババ傘下の阿里達摩院(DAMOアカデミー)が世界十数カ所の医療機関と共同で無症状の人を対象とした膵臓がんスクリーニングにAIを活用。最も簡単な単純コンピューター断層撮影(CT)スキャンのみで2万人以上の患者から31の病変を検出した。うち2例は既に手術を終えたという。同誌は論評記事で「医用画像AIに基づくがんスクリーニングは黄金時代を迎えようとしている」と評価した。

 膵臓がんは発見や治療が難しく、手術後の生存率が低いことから「がんの王様」と呼ばれる。5年生存率は10%未満で、患者の8割が発見された時点で後期と診断されるが、現状で有効なスクリーニング方法がなく、一般的な単純CT画像での初期病変の検出は困難とされている。

 研究チームは、膵臓が腹部の奥まった場所にあり、単純CT画像でがん化が発見しづらいことを踏まえ、独自の深層学習フレームワークを構築。肉眼で識別困難なCT画像中の微妙な病変の特徴をAIで拡大、識別することで安全かつ効率的な早期膵臓がんの発見を実現したほか、従来のスクリーニング方法で偽陽性が多発する問題も克服した。

 チームによると、同技術はこれまでに病院や健康診断などで50万回以上使用され、偽陽性は千回に1回しか出ていない。今後も多施設で前向き臨床試験を継続し「膵臓腫瘍にスクリーニングは推奨しない」という悲観論を打ち消していくという。

 アリババ達摩院の医療AIチームは、AIと医用画像の融合研究に長年取り組んでいる。責任者の呂楽(りょ・らく)氏は、1回の単純CTスキャンで複数の早期がんを検出できるようにするため、AI技術を活用した安価で効率的な新しいスクリーニング方法を世界の先進医療機関と協力して模索していると説明。現時点で罹患率の高い膵臓がんと食道がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、胃がん、大腸がんの七つのがんで段階的な成果を上げていると語った。(c)Xinhua News/AFPBB News