【12⽉5⽇ Peopleʼs Daily】海南熱帯雨林国立公園の鸚哥嶺地区の保護員である符恵全(Fu Huiquan)さんと仲間は水域を見たり草木の保護を行ったり、さらに写真撮影や記録、データの送信を行った。各種情報はアプリを通じてスマート雨林ビッグデータセンターに蓄積される。符さんらの経路も3Dマップに記録される。

 海南(Hainan)の熱帯雨林は、中国で生物分布が最も集中して最も多様で、保存状態が最も良好で、面積が最大の大陸性島嶼(とうしょ)型熱帯雨林だ。原生林の中の道は変化に富んでいて滑りやすい。従来型の森林保護モデルでは効率が悪く、保護員の安全確保にも問題があった。

 十数年前に使えた道具は山刀と方位磁針、旧式カメラだけだった。今では、衛星測位器やドローン、赤外線カメラなどの機器を駆使している。例えばドローンを使えば、雨林地区の全体像を観察したり人が入りにくい場所を確認したりできる。緊急連絡の必要があれば、現場の写真や映像を送信したり、救助を求めたりすることもできる。

 ハイナンテナガザルは、海南熱帯雨林国立公園の覇王嶺地区が世界で唯一の生息地の、絶滅の危機が最も深刻な霊長類の一つだ。監視制御指揮センターのスクリーンには2匹のハイナンテナガザルの姿が映されていた。木から木へとジャンプしても姿を逃さない。

 2021年に始まったスマート雨林プロジェクトにより、覇王嶺地区と吊羅山地区では105台の監視カメラ、約35キロの振動光ファイバー、数百台の赤外線熱感知トリガーカメラが設置され、死角のない「電子フェンス」が構築された。

 野生動物は人に対する警戒心が強くて移動もするため、かつては保護対策の設定にも厳しい限界があった。しかし「電子フェンス」を使えば24時間体制の監視が可能だ。公園内には重点保護のための立ち入り禁止区域がある。無許可で立ち入る兆候があれば「電子フェンス」が警告を出してくれる。

 海南熱帯雨林国立公園管理局の王楠(Wang Nan)副局長によると、デジタル技術の支援により、ハイナンテナガザルの個体数は6群37匹にまで回復した。また、2019年以降に新たに54種の生息が確認され、長年にわたり確認されていなかった絶滅危惧種が発見された事例もあった。

 尖峰嶺天池生態モニタリング地区では、白い金属製の箱が目を引く。この装置により大気中のマイナス(酸素)イオン、微小粒子状物質(PM2.5)、温度、湿度、風速および光照射などを観測して、データを自動送信することで研究や科学教育に利用している。

 海南熱帯雨林国立公園では模索を続けた結果、熱帯雨林資源の価値を測定する方法が構築された。2045億1300万元(約4兆2345億円)――。この数字は中国の国立公園として初めて2021年9月に算出された、海南熱帯雨林国立公園の生態系総生産(GEP)だ。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News