地球上のバクテリアが月面の土壌を肥沃にする可能性を発見
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【11月30日 Xinhua News】世界中で有人月面探査計画が相次いで発表される中、月面で生命維持のための植物栽培の可能性を探る研究が盛んに行われている。このほど、中国の農業科学者らによる研究で、宇宙飛行士が月面の土壌で植物を育てる際、地球の土壌に含まれる細菌(バクテリア)が役立つ可能性があることが新たに分かった。
中国農業大学の孫振才(Sun Zhencai)副教授率いる研究チームはこのほど、バチルス・ムシラギノサス、巨大菌、シュードモナス・フルオレッセンスという地球上にある一般的なバクテリア3種類を組み合わせることで、月表層模擬土壌で植物が利用できるリンの濃度を高められることを突き止めた。これにより月の土壌肥沃度が向上し、月面で植物の生育を促進できるという。研究成果は今月、「ネイチャー」系のオープンアクセス誌「コミュニケーションズ・バイオロジー」に掲載された。
研究者らはまず、地球上の一般的な土壌バクテリアから5種類を選び、月表層模擬土壌で測定した。うち3種類が植物にとって利用可能なリンの含有量を大幅に増加させることができると分かった。リンは土壌に含まれる栄養素で植物の成長に欠かせないが、これまでの研究から、月面土壌に含まれるリンは植物に吸収されにくい形態であると考えられてきた。研究者らは実験で、前出のバクテリア3種類を用いて月表層模擬土壌を処理すると、植物の利用可能なリンの含有量が10~21日で2倍以上になることを解明した。
次にこの3種類で処理した月表層模擬土壌に実験用モデル植物のベンサミアナタバコを植えた。18日後、モデル植物はバクテリアを接種していない通常の月表層模擬土壌で育てた植物に比べ、茎も根も長く、葉も大きく重みがあることが観察された。さらに、植え付けから24日後の葉緑素(クロロフィル)の含有量も、バクテリアを接種していない月表層模擬土壌で育てた植物より約2倍(104%)高いことも分かった。
孫氏は「実験結果はいずれも、3種類のバクテリアで処理した月表層模擬土壌がベンサミアナタバコの成長を促進、維持することを示している」と語った。
また研究結果は将来、宇宙飛行士が月で長期滞在する際の最低限の生存を維持する上で重要な意味を持つとも指摘。「植物は養分と酸素を供給し、閉鎖生態系での物質循環を促進できるため、月面での植物栽培用温室は将来的に月面基地での標準仕様になるだろう。月面土壌の肥沃度を改善し、植物栽培の基質として使用できるようにすれば、地球から月へ栽培システムごと運ぶ必要がなくなるため、ロケットの輸送需要を大幅に削減できる」と語った。
なお、この研究以前の孫氏の主要研究分野は土壌中の栄養素と微生物だった。今回の宇宙生物学の研究はもともと、科学研修プログラムに参加した中国農業大学の学部生、夏一桐(Xia Yitong)氏の着想に基づいている。(c)Xinhua News/AFPBB News