【11月20日 Xinhua News】火星への移住は人類の夢の一つだが、まずは酸素不足の問題を解決する必要がある。中国安徽省合肥市の中国科学技術大学などの研究チームがこのほど、人工知能(AI)を搭載した「ロボット化学者」を使って火星の隕石(いんせき)から新しい触媒を開発することに成功し、火星の水を利用して高効率かつ低コストで酸素を生成するソリューションを生み出した。研究成果は14日、国際学術誌「ネイチャー・シンセシス」に掲載された

 科技大の羅毅(Luo Yi)、江俊(Jiang Jun)両教授と尚偉偉(Shang Weiwei)副教授のチームが、同大と国家航天局、安徽省が共同で設立した深空探測実験室の張哲(Zhang Zhe)研究員らと協力した。

 火星の大気は酸素の含有量が極めて少ないため、いかにして酸素をつくり出すかが課題だった。世界の科学界ではここ数年、太陽光発電を利用して水を分解し酸素を抽出する方法が実現可能な技術的解決手段の一つと考えられてきた。

 だが、水の電気分解は、酸素の生成速度の遅さやエネルギー消費の多さといった問題を解決するため触媒を使う必要がある。地球から運べば莫大なコストがかかるため、火星で材料を調達して触媒を作れるかが重要な技術的課題だった。低温で気圧が低く、放射線量も多い火星では、人が作業することは難しい。ロボット化学者が人に代わって火星の隕石の成分を分析、酸素を取り出す触媒を開発した。

 羅教授は、今回の研究でAIが自動で新材料を開発できることが実証されたと説明。人類が地球から遠く離れた星で酸素の生成や基地の建設、食料の生産などを行う上で役立つことが期待されるほか、火星の資源を利用して化学物質を開発することで太陽系の奥深くのさらなる探索を手助けすると語った。

 ロボット化学者は「小来(シャオライ)」と名付けられた。今回の触媒開発では、火星の隕石に含まれる複数の化学成分から考えられる配合の組み合わせが376万通り以上存在し、人間の研究チームが一つずつ検証した場合は2千年余りの時間が必要だった。

 江教授によると、小来は関連の科学論文5万本余りを学習し、実験を重ねながら配合比率を調整し続け、6週間で最良の配合を見つけ出した。(c)Xinhua News/AFPBB News