【11月16日 東方新報】中国南部・雲南省(Yunnan)昆明市(Kunming)に、今年も多くのユリカモメが飛来している。11月から3月までが越冬シーズンで、既に約1万羽が生息。来春までに4万羽が越冬する見込みだ。

 標高1900メートルの昆明市は亜熱帯に近いが、海抜が高いため1年を通して寒暖差が小さい。最高平均気温が夏でも24度、冬は15度程度で、1年中暖かいことから「春城」と呼ばれている。日本の長距離陸上界のトレーニング地としても知られている。

 ユリカモメが昆明を訪れるようになったのは半世紀近く前。主にロシアから南下するユリカモメが1985年に昆明を「発見」し、それ以来、ユリカモメの一大越冬地となっている。

 ユリカモメは雲南省最大の湖・滇池(Dianchi)や市民の憩いの場・翠湖公園、郊外にある庭園式公園・大観公園など市内各地の水場や湿地で過ごしている。ユリカモメは昆明の風物詩となっており、多くの観光客が訪れる。ピーク時は滇池や翠湖公園に1日10万人の市民・観光客が集まり、写真を撮ってSNSにアップしたり、近づいて来たユリカモメにエサをやったりしている。

 市では11月から来年3月までの間、ユリカモメのエサを30トン用意。観光客や市民へのサービスの一環で、市内の62か所で1日2回、エサやりポイントを作る。

 今年のトピックスは、11月1日から「ユリカモメ観察マナー条例」が施行されたことだ。ユリカモメの生息エリアに侵入したり危害を加えたりした場合、50元(約1043円)から500元(約1万433円)の罰金が科される。コロナ禍が収束し、今年に入り中国各地で観光が活発になっている。「カモメ観光シーズン」を迎え、マナー違反の人が続出しないよう警戒している。また、一部のユリカモメに標識を付け、血液検査をして鳥インフルエンザの発生がないか確認していく。

 中国では近年、環境改善が進み、多くの渡り鳥が各地に飛来している。今年10月前半には、広東省(Guangdong)の渡り鳥自然保護区で17年ぶりに絶滅危惧種のカンムリアジサシ(ヒガシシナアジサシ)の姿が撮影された。生息数が激減し、「神話の鳥」とも呼ばれている。青い空の下、元気に羽ばたく水鳥の姿を各地の市民たちが楽しめるようになっている。(c)東方新報/AFPBB News